増える[偽装の達人《5千円で完治可能
梅毒
性感染症の梅毒が広かっている。今年1月~10月の感染者は現在の統計方法となって
以降初めて1万人を超えた。
症状だけでは判断が難しい「偽装の達人《とも呼ばれるが、どんな病気なのか。治療
法は。専門家に聞いた。
国内の梅毒患者は戦後に20万人を超えたが、抗菌薬の開発で60年代以降は減少してい
た。だが、2013年以降は1千人を超えるように。欧米でもここ10年で増加傾向を示
している。国立感染症研究所の分析によると、男性では20~50代、女性では20~30代が
多くを占めるが、40代以上でも確認されている。
梅毒は細菌「梅毒トレポネーマ《に感染して起こる。3週間ほどの潜伏期間を経て、
性器や囗に硬いしこりができるが、自然に消える。3ヵ月後には、手のひらや足、全身
に赤い発疹などができる。
ただ、しこりや発疹には痛みやかゆみがなく、消えたり現れたりするため、気づかず
放置することがある。この間に感染した人の粘膜や皮膚と接触して広がる。性交やキス
で感染し、母親がかかれば胎児にも感染する。放置すると数年後に、ゴムのようなこぶ
が頭や全身、骨などにできる。大動脈溜ができるなどして死に至ることもある。
東京都で性感染症内科クリニックを開く尾上泰彦院長は「症状だけで診断するのは難
しい《と話す。感染しているかどうかは採血でわかる。泌尿器科や皮膚科、婦人科など
で検査可能だ。結果が出るまで30分程度~翌日のものもある。
感染が判明しても抗菌薬を飲むなどすれば完治する。内朊であれば1日3回、4週間
ほど続ける必要がある。だが途中でやめ、再発する人が後を絶たないという。
今年1月からは米ファイザー社製の注射薬も国内で登場。感染から1年以内であれ
ば1回、1年以上経っていれば3回を、おしりに接種する。尾上院長の医院では57人
に打ったが副反応はないという。いずれの薬も保険適用だ。医療機関によって異なる
が、検査費や治療費は計5千円前後で済む。職場などに知られたくないという人とは
自由診療も選べる。
予防には性交時のコンドーム着用が挙げられるが、パートナーが感染を自覚していな
いことが多く、完全に防ぐのは難しい。尾上院長は「上安な人以外にも、結婚や妊娠
など人生の節目で検査を受けてほしい《と話している。(米田悠一郎)
(出典:朝日新聞、2022/11/26)
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