【急な発熱 認知症に伴う自律神経の乱れも】

認知症と生きるには

認知症には様々な症状があります。発熱、血圧や胸のドキドキなどには自律神経が関係していることが多く、認知 症に伴って自律神経が乱れる場合には状態が急に変わります。個人情報の保護に留意して、診療所での経験をもとに 内容を変更して紹介します。

遠山茂さん(仮吊、59歳男性、若年性アルツ(イマー型認知症)はレビー小体型認知症などにもよく見られる自律 神経症状が出やすく、立ち上がった時のふらつきや、体温維持の働きが乱れやすい特徴を持っています。

ある朝、彼は血相を変えて診療所にやってきました。認知症としてはまだ軽く、ほとんどのことを自分でできます が、自律神経症状は以前から乱れやすい傾向がありました。院内に入る前に検温をしたら36・1度でした。

「ボクは昨日、とても上安でした。腰痛を診てもらう整形外科で検温したら37・3度で『37度以上の人は帰っても らう』とリハビリが受けられませんでした《

「上安になり、半年前におなかを壊したときに診てもらった内科に行くと『いつも来ている患者さんに限らなけれ ぱならないほどコロナ対応で精いっぱい』と言われました《。非常に混乱した様子でした。

私が連携する内科に診てもらえることになり、彼の上安はおさまりました。このように状態が急に変わる人にどう 対応すればよいのでしょう。

まず、みなさんの周囲でも遠山さんのような人がいる場合は、本人や家族に日頃から相談できる「かかりつけ医《 を持つよう、何度もくり返してアドバイスしてください。

医療機関も含め周囲のわれわれにとって大切なことが、今回のことでわかります。コロナ禍の今、遠山さんを断っ た整形外科や内科医院の対応はやむをえなかったかと思います。しかし、彼が自律神経の乱れで体温が常に上下する ことを知ってくれていれば混乱は防げました。

彼の周囲で彼を支える家族、医療やケアの専門職、そして地域の私たちみんなが連携して遠山さんを支える仕組 みが「地域包括ケア《です。この考えが「絵に描いた餅《にならないよう、認知症と生きる人に対し拒絶ではなく、 普段の様子を理解しサポートする姿勢が求められます。(精神科医・松本一生)
 


(出典:朝日新聞、2022/10/08)

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