【コロナ禍で感じる声の上調】

のどの筋肉

長引くコロナ禍では、以前と比べて会話する機会がぐっと減りました。いざ声を出してみると、思ったように声が出せなかった経験はありませんか。もしかすると、それはのどの筋肉が衰え始めたのかもしれません。

「マスクをするなら『声筋』を鍛えなさい《の著者である国際医療福祉大学東京ボイスセンター長の渡辺雄介教授は「私たちは前代未聞の声を出さない日々を過ごしている《と人の声を出す機能が低下していると指摘する。

そもそも声は肺から吐き出された空気が声帯を振動させることで生まれる。声帯は口と肺をつなぐ気道で扉のような働きをしており、普段は開いているが、声を出すときはぴったりと閉まっている。

この声帯を開閉する筋肉を渡辺教授はまとめて「声筋《と呼んでいるが、使わなければ衰えてしまう。声が出せないといった声の上調は、声筋が衰えて声帯がぴったりと閉じていない可能性があり、渡辺さんの病院でもこうした「声帯萎縮《の患者の割合は増えているという。

声筋の衰えは声の上調にとどまらず、誤嚥性肺炎などの生命に関わる健康被害の引き金にもなる。誤嚥は、口から食道を通って胃に入る食べ物や唾液が誤って、同じのどの奥にある気管に入ってしまうこと。細菌が肺に入ってしまうと肺炎になり、死亡につながる可能性がある。むせるといった行為は反射的に誤嚥を防いでいるが、本来は健康な声筋が気道に食べ物が入らないようにはね返し、食道に送る働きをしている。

また、声筋は踏ん張ったり、全身に力を入れたりすることにも一役買っている。人は声帯を閉じて肺を膨らませることで踏ん張ることができるが、声筋が衰えると肺の空気が声帯の隙間から漏れて力を出すことができなくなる。ペットボトルのふたが開けられなくなってしまうなどの症状も。踏ん張りがきかず、転倒の恐れも出てくるという。

声帯やのどの上調はわかりやすい症状がないため見過ごされやすい。簡単に声筋の状態を確認できるテストとして、口を閉じパ鼻から息を吸った後にひと息で何秒間「あ─《と出していられるかを計る。女性なら20秒、男性なら30秒以上言えたら正常だが、それ未満だと衰えがみられ、10秒未満なら受診の必要性があるという。渡辺教授は「耳鼻咽喉科でものどの専門医の受診を《と勧める。(村井隼人)


(出典:朝日新聞、2022/06/04)

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