【歯の健康を守る 「つば《の力】

唾液力を高める

新型コロナウイルスの感染拡大とともに歯科医院から足が遠のいた記者は、マスク生活で口元を気にする機会が減り、歯磨きも手を抜きがちに。先月、2年半ぶりに歯の検診に行くと、歯周病予備軍といわれヽ唾液の分泌量がかなり少ないとも指摘された。

唾液の量ってそんなに大事なの?

日本歯科大学の菊池憲一郎教授(組織学、解剖学)を訪ね、説明してもらった。

健康な人が1日に分泌する唾液は1~1・5㍑とされる。食事の際に消化を助けるだけでなく、口の中の細菌を洗い流したり、声を出しやすくしたりする。

歯の健康にも重要な役割を果たしている。毎回の食事で酸性になった口の中を中和して、歯の溶けたエナメル質を修復する「再石灰化《を促すほか、歯石も予防してくれる。義歯(入れ歯)の安定にも役立っている。

「残念ながら、加齢とともに、唾液腺の活動は弱まります《。菊池教授は続ける。唾液を作る細胞が、年を取り死んでしまい、65~70歳を過ぎると、唾液の分泌の減少が顕著になるという。それを裏付けるように、2016年 の厚生労働省の調査では、55歳以上で年齢階級があがるほど「口がかわく《の訴えが増え、65~74歳で10・9%、75~84歳で16・9%が症状を訴 えていた。

抗アレルギー薬など飲み薬の影響でも唾液の分泌が減る場合もあるという。

体を鍛えるように、唾液を出す力も鍛えることができないだろうか。

10年ほど前から、様々な場で推奨されているのが「唾液腺マッサージ《。唾液を出す唾液腺の代表的なところを刺激し、活性化させる方法だ。

主な唾液腺は三つ。こめかみ下の内側にあり、ほおがぷくっと膨らむ「おたふく風邪(ムンプス、流行性耳下腺炎)《で知るられる耳下蹴▽口底部の舌のすぐ下の舌下腺▽もっと深く沈み込み、通常安静時に多くの唾液を作る顎下腺だ。3ヵ所で唾液全体の95%を占めるという。

「風呂の湯船につかり、血流が良くなってからやると効果的です《と菊池教授。

もっと手軽なところでは「レモンや梅干しなど酸味のある食べ物を想像するだけでいい。いつでもトライできますよ《とも助言してくれた。

早速やってみて歯の健康を取り戻し、まだまだ美味しいものを食べ続けたい。(熊井洋美)


(出典:朝日新聞、2022/4/23)

戻る