【「早食い」の習慣、高い肥満度】

ゆっくり食べる

「よくかんで食べなさい《。子どもの頃にそう教わった人も多いだろう。よくかんで食べることは、あごの筋肉や骨の発達を促し亠瀕を増やしてむし歯の予防につながる。最近の研究で、いわゆる「早食い《が体重増加にも影響することもわかってきた。

早稲田大スポーツ科学学術院の林直亨教授らは2021年12月、ゆっくり味わったり、よくかんで食べたりすると、食後のエネルギー消費が増えるとの研究成果を英科学誌で発表した。平均23歳の学生ら11人に、20㍉リットルずつのココア味飲料10杯を5分間で飲んでもらい、その後90分間に安静時から増加するエネルギー消費量を測定した。

その結果、30秒間隔で1杯ずつのみ込んだだけの場合は平均3・4㌔カロリーだったエネルギー消費が、1杯ごとに30秒口に含んで味わった場合は5・6㌔カロリーに、さらに口に含んだ30秒間に1秒で1回かむ動作を加えると7・4㌔カロリーに増加した。

林教授らは、これまでに早食いで咀嚼回数が少ないほど体重が増える傾向があるとの成果も報告。咀嚼の刺激によって、脂肪細胞の一種でより多くのエネルギーが消費された可能性があると推測する。

たとえ1食4㌔カロリーの差でも、脂肪の消費に換算すれば年間約600㌘に相当する。食べる量自体がついつい増えてしまう早食いは過食ももたらすため、「体重の増加にはダブルパンチ。ゆっくりとより味わって食べることが大事《と林教授は指摘する。

疫学調査でも、肥満と早食いの強い関係が明らかになってきた。09~11年度の厚生労働科学研究班の報告によると、千葉県と大分県の特定健診結果約20万人分を対象とした解析で、肥満度が高い大ほど早食いと答えた人の割合が高かった。20歳からの体重増加が大きい人も同様の結果で、研究を総括した国立保健医療科学院の安藤雄一特任研究官は「早食いの大は太りやすい傾向がある《とみる。

研究班は早食いの習慣を見直してもらおうと「咀嚼支援マニュアル《を作成した。歯を失ってよくかめない大はミネラルや食物繊維など栄養バランスが崩れやすいため、歯科での治療を勧め、早食いのタイプ別によくかんで食べる方法をアドバイスする。

安藤特任研究官は、「よくかんで食べることは、禁酒や禁煙に比べても取り組みやすい。生活習慣改善の手段として健康づくりにつなげて欲しい《と話す。(林義則)


(出典:朝日新聞、2022/4/16)

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