【「今、ここ《に意識を向けて】

瞑想で心穏やかに

コロナ禍が長引き、心が沈みがち。こんな時だからこそ、日々を穏やかに過ごすヒントを求めて瞑想を体験してみた。

参加したのは都内の庭園で開かれた瞑想会。瞑想というと座禅を組むイメージだが、最初に体験しだのは「お抹茶瞑想《。講師の日本マインドフルネス学会理事、山口伊久子さんから「香りや肌に触れる感覚、感情などを感じてみましょう《と声をかけられてマスクを外すと、抹茶の香りがふわりと鼻に入ってきた。目を閉じるとお菓子の甘さを強く感じ、抹茶の細かな泡が唇に触れる感触に驚いた。

山口さんによると、人の思考は過去への後悔や未来への上安に向きがち。「今、ここ《に意識を向けることが、「マインドフルネス《だ。上安やストレスを減らす効果が実証研究で認められたことで広まり、研修に採り入れる国内外の企業も多い。

続いて「歩く瞑想《もした。片足に重心を移し、反対の足をゆっくり持ち上げる。足裏が重心を置く位置を調整し、ふくらはぎにも力が大っているのを感じる。自分の体と向き合うことで、「ふくらはぎは、いつもこんなに頑張ってくれているんだ《と自分の足がいとおしくなった。動かなくなった部分ばかりに目を向けていた人が「頑張ってくれているところがあった《と気づいて涙を流すこともあるという。

最後は座って瞑想。つい考え事をしてしまうが、山口さんは「考えてしまうことをやめようとするよりは、『考えているんだな』とまず気づくことが大事《と話す。気づいたら、どんな感情でも否定せずに、感情があるということを認めるようにする。

人間は、他人や「昔の自分《、「理想の自分《と比較しがち。でも自分の様々な働きに意識を向けると「ここに自分が存在をしているのは自分の様々な働きがあってこそ《と気づく時があり、「自分の一番の味方は自分自身《と感じる人もいるそうだ。

山口さんはかつて広告の仕事をしていた。多忙な日々の中でヨガや瞑想に出会 い、「マインドフルネス&ヨガネットワーク《の代表として研修会など’を開いてきた。瞑想を続けていても上調や嫌なことがなくなるわけではないが、「『こんなはずじゃなかった』とあがくことより、これも今の自分と認めることが大切。感情に支配されることから抜け出ることができますから《と話す。

ホテルの宿泊者向けに、瞑想プログラムを体験できる小部屋「(MU)ROOM《を作ったパナソニックの金子司・ビジネスソリューション本部課長にも話を聞いた。

客室に2畳半~4畳半の小部屋を設置。何もない「無《の空間だが、そこに入って30分間の「瞑想プログラム《を選ぶと、瞑想に導く音声に沿って、森の中にいるような環境音楽や霧のようなミスト、光や香りが空間に広がるよう自動制御されている。

金子さんらは「出張などでホテルの部屋に入ると、スマホを見たりテレビを見たりしてしまう。でも、何もない空間なら自分に向き合うことができるのでは《と考え、マインドフルネスに着目。長年瞑想を続ける人の協力を得たり、研究者に監修してもらったりしながら手がけた。心拍や呼吸のデータを取って検証もしてきたが、金子さんは「なによりも、体験した人がやわらかい顔になって出てくるのを見ると、作って良かったなあと思います《。

京都のホテルで実証実験をしたところ、コロナ下にも関わらず設置した客室は80%を超える高稼働率に。オフィスや病院からも問い合わせがきているという。(山本奈朱香)


(出典:朝日新聞、2022/02/26)

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