【つかる・飲む・癒す 楽しむ湯】

温泉

一段と寒さが増して、湯けむりが恋しい季節になってきた。疲れた体を癒やす温泉だが、入り方によっては逆効果にならないとも限らない。安全に温泉を楽しむ方法を教えてもらった。

温泉の定義は温泉法で定められている。「地中からわき出る温水、鉱水、水蒸気、その他のガス(天然ガスを除く)で、源泉温度が25度以上であるか、または、一定量以上の成分を含むもの《。つまり、25度以上あれば「温泉《だし、それより冷たくても、リチウムイオン、ラドンなど19種類の成分のうち少なくとも一つが一定量以上含まれていれば「温泉《だ。

このため、色や匂い、肌触りなど、温泉ごとにさまざまな特徴がある。「温泉の性質ともいえる泉質は、含まれている成分の種類と量によって分類できます《と説明してくれたのは、日本温泉協会専務理事の関豊さん。単純温泉▽塩化物泉▽炭酸水素塩泉▽硫酸塩泉▽二酸化炭素泉▽含鉄泉▽酸性泉▽含ヨウ素泉▽硫黄泉▽放射能泉の10種類に分けられるという。

例えば、硫酸イオンを含む「硫酸塩泉《は、飲用することで便秘の改善に効果があるといわれる。石川県の山代温泉や島根県の玉造温泉が硫酸塩泉にあたる。「酸性泉《は群馬県の草津温泉や秋田県の玉川温泉が有吊だ。水素イオンを多く含んでいて殺菌効果があり、切り傷やアトピー性皮膚炎に効くとされる。ただし、刺激の強い泉質のため、長湯は禁物だ。

温泉に入るときにどんなことに注意すればいいのだろうか。

寒い時期に気を付けなければならないのは、温度差で血圧が急上昇する「ヒートショック《だ。血圧の変化で脳出血や心筋梗塞を引き起こすことがある。浴槽に入る前に十分にかけ湯をして、熱さに慣れてから入ろう。また、入浴中は800ミリリットルもの水分が失われるので、入浴前後にそれぞれコップ1~2杯の水分を補うことが大事だ。

温泉に行くとつい欲張って長く入りがちだが、ほどほどがいいという。温泉気候物理医学会理事の早坂信哉さんは「成分によって血行が良くなり、体が温まりやすい。額に汗がにじんできたら、いったん上がりましょう《と話す。トータルで10~15分ほど入れば十分だという。

温泉地の外湯めぐりでは、肌触りや湯触りを楽しむ程度と考えて1ヵ所1~2分くらいにすると湯あたりせずにすむ。早坂さんは「巡った中で気に入った温泉を見つけて、そこに長くつかるといい《。

温泉から出るときは、基本的に体に付着した成分を洗い流さなくても問題ないが、酸性泉、硫黄泉などで刺激が強い場合や肌弱い人はシャマーで流すといいという。

温泉の楽しみ方の一つに、温泉水を飲む「飲泉《もある。胃腸系の病気や便秘に効果があるという。ただし、保健所が許可している飲泉所で、新鮮なものを飲むことが大事だ。飲泉所ごとの注意書きに示されている適量を飲むのが良い。持ち帰る間に菌が繁殖することもあるため、その場で飲むことも大切だ。

温泉旅館での過ごし方のコツもある。チェックインして部屋に通されると、お茶と茶菓子が出てくることが多い。早坂さんによると、温泉につかると血糖値が下がりすぎてしまうことがあり、茶菓子はそれを予防する意味もあるという。すぐに温泉に行きたい気持ちもわかるが、まずは少し体を休めて、水分と糖分を口に入れてから温泉へ向かおう。(小川詩織)


(出典:朝日新聞、2021/12/11)

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