【丁寧な線で気持ち伝える】

ボールペン字のコツ

今年も、年賀状を考える時期が近づいてきた。宛吊はプリンターで印字しても、手書きでひと言を添える人が多いのでは。丁寧に文字が書けたら気持ちもすっきりするもの。字が下手な人でも、ボールペンできれいに書くコツがあるようだ。

ボールペン習字の通信講座を始めて89年という、「美子ちゃん《でおなじみの日本ペン習字研究会(日ペン、東京都新宿区)の会長、田中鳴舟さん(74)を訪ねた。

字を書くときは、ボールペンのペン先が紙に食い込むようなイメージで、しっかり筆圧をかける。一方で、ペン先をスムーズに動かさなければならない。

そのためには、まず、座り方やペンの持ち方、書くスピードなどが大切になる。着席したときは、机との距離に注意。机とおなかまでにこぶしひとつが入るほどのスペースを空ける。軽い前傾姿勢で、ペンを持つ手の手首とひじの間の柔らかい部分を机に置き、手の小指側の側面も机につける。手を浮かせると筆圧や動きが安定しない。

ペンの持ち方は、親指の腹と人さし指の先、中指の側面の3点で支えるのがいい。ペンは上の方を持だない。ペン先の動きの幅が広くなりすぎて、書きたい線の乱れにつながる。

書く時は、ペン先をゆっくり紙に置き、置いたらすっと動かす。ペン先を速く動かしすぎると筆圧が十分にかからず「浮いた線《になる。逆に遅すぎると線がふらつく。

本番の前に、漢数字の「三《で練習することを勧められた。

ポイントは3本の横線の間隔がほぼ同じになること。3本線のうち上から2本は同じ長さで、一番下はその2倊が理想型だ。また、3本とも全体としてわずかに右肩上がりに書くと力強さが出る。ただ、書き終わりのペンの止め方は3本それぞれに違いがある。一番上は上に少しカーブさせ、真ん中はそのまま、一番下は少し下に反らす。一番下の線は家の土台と同じで、文字全体を安定させるためという。

年賀状でひと言を添える際によく使う「お元気ですか《。コツを教わった。

「お《は縱長の四角マスに収まるように書く。右上の点は、マスの右上の位置に打つため、意外と高い位置になる。「気《は下の「メ《を中心より左側に書く。「で《は書き始めの横線の右肩上がりを意識する。「す《の真ん中の輪は横長にすれば見栄えがよい。「か《は中心の空白部分を広めにとる。

手書きの文字について、田中さんは「書く人の心の動きが文字に表れる。だから、印字したものより、書く人の気持ちや人間性が伝わるのではないか《と話す。文具大手、パイロットコーポレーションが昨年、首都圏の20~60代、401人に実施したアンケートによると、年賀状を出す人の89%が「手書き箇所がある《と答えた。

では、どんなボールペンを使えばいいか。パイロット広報部の田中万理課長によると、年賀状は投函や配達の過程で水にぬれる可能性がある。水性ペンでも耐水性に優れた「顔料使用《などと表示されているものを選ぶといい。

また最近の年賀状の用紙は、インクジェットプリンター用や写真印刷用もある。これらは、紙の表面に施されたコーティングをボールペンの先が削り取ってしまい、インクが詰まることがある。太めのペンを使い、なるべくペンを立てて書くか、コーティングされていない宛吊の面にひと言添えるなど、工夫が必要という。(井上充昌)


(出典:朝日新聞、2021/11/27)

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