【体臭強める?長引く在宅勤務】

加齢臭

在宅で過ごす時間が増え、自分や家族の臭いに敏感になった人も多いのではないだろうか。在宅勤務が増えている人は、特に「加齢臭《が強くなりやすいかもしれないという調査結果もある。どんなことに気をつければいいのだろう。

加齢臭は、古本や古い油、チーズのような臭いに例えられる。正体は「ノネナール《という物質だ。毛穴の奥から分泌される皮脂に含まれるパルミトオレイン酸と過酸化脂質が反応して生じる。一般的に男性は50歳前後から、女性は閉経後に増える。男性のほうが汗や皮脂などの分泌量が多いため、臭いが強くなりやすいとされる。

在宅勤務との関係は、ロート製薬(大阪市)が9月に研究結果をまとめている。30~60代の男性10人に、1日は在宅勤務、1日は出社勤務をしてもらい、臭い物質の分泌量に変化が出るのかを調べた。すると、ノネナールの分泌量は、在宅勤務のほうが1・5倊ほど多くなった。研究に関わった担当者は「ノネナールの生成メカニズムは男女とも同じなので、女性も同様の結果が 得られるのではないか《とみる。

出社勤務のほうが動いたり汗をかいたりする機会が多そうなのに、意外な結果にも感じる。しかし、体臭について研究する東海大学の関根嘉香教授に尋ねると、「実は合理的な結果《との答えが返ってきた。ノネナールのもとになる過酸化脂質は、ストレスで増えることが知られている。「在宅勤務という環境変化や慢性的な運動上足がストレスになっていて、加齢臭の発生につ なかっているのだろう《

加齢臭が出ないようにするには、どんなケアがあるのだろうか。ストレスをためないことももちろん大切だが、食べ物に注目した研究もある。

今年4月にイギリスの大学が発表した研究成果によると、49~64歳の男女14人に毎日、1週間にわたって6㌘のカシスパウダーを食べてもらったところ、ノネナールの発生量が平均でおよそ半分に減った。カシスに含まれるアントシアニンやビタミンCの抗酸化作用によって、体内で過酸化脂質ができるのを抑えたらしい。

カシスパウダー6㌘は、カシスの実では23粒ほどに相当するという。ブルーベリーなどもこれらの成分を多く含む。個人差はあるものの、定期的にとるようにすると加齢臭の抑制が期待できる。

では、すでに出てしまった加齢臭のもとを落とすにはどうすればいいのか。

「皮脂なので洗えば落とせる《と関根さん。朝にシャワーを浴びれば、夕方ごろまでは臭いを抑えられるという。特に、耳の後ろや頭皮、脇、背中は皮脂の分泌が多いため、意識して洗うとよい。

そもそも自分の臭いがわからない、という人には、簡単にチェックする方法がある。用意するのは、使った肌着や枕カバーとポリ袋。袋に肌着などを入れて空気で満たし、これを嗅ぐ。嗅ぐ前に一度、室外に出て自分の臭いに慣れた鼻をリセットするのがポイントだという。袋の中から気になる臭いがすれば、注意が必要だ。

ただ、関根さんは「臭いはあくまで自分の体の状態を知る大切な手がかりととらえたほうがよい《と強調する。「最近は臭いを気にしすぎる場面が増えた。体臭があるのはお互い様。あまり神経質にならず、臭いがすればストレスをため込みすぎていないか、生活が乱れていないかなどと自分のケアに意識を向けてみてほしい《

気にしすぎによるストレスが、加齢臭を招くことだってあり得る。適度に付き合っていくのがよさそうだ。(矢田文)


(出典:朝日新聞、2021/11/20)

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