【マスクで気づく聞きづらさ】

補聴器

人間ドックで昨年「生活に支障が出たら聴力検査を《と指摘された。今のところ生活に支障はないが、新型コロナウイルス感染症の流行で、マスク生活で聞こえにくさを感じる中高年が増えているという。

家電大手のシャープは9月、ワイヤレスイヤホンのようなデザインの補聴器の販売を始めた。対象は軽度~中等度の難聴で、見た目に抵抗感のある40~60代の現役世代を意識して開発したという。一人ひとりの聴力に合わせた調整も、店頭ではなく、自宅からスマートフォンでできるのも特徴。研修を受けた認定補聴器技能者や言語聴覚士が対応する。

同社によると「マスク着用やソーシャルディスタンス、オンライン会議の増加などで、聞き取りづらさを自覚する大が増えている《。今年8月、50~70代の男女1千人を対象にした同社のインターネット調査で「日常生活で聞こえづらさを感じる《人の割合は23・4%。新型コロナの流行前の約1・5倊に増えた。年代別では50代でも21・O%だった。調査方法は異なるが、50代 後半で難聴の人は1割前後たった愛知医科大の内田育惠医師らの調査(2012年、自本老年医学会雑誌)より多い。

「マスクモード《のついた補聴器もある。シバントス社(神奈川県大和市)は昨年8月、販売を始めた。同社によると、日常の会話の周波数は250~4千ヘルツで、マスクを着けて話すと2千ヘルツより高い音が吸収され、こもった音になり、聞き取りづらくなる。マスクモードはスマートフォンのアプリで操作し、吸収される高めの音をより聞こえやすい音質に調整するという。

北里大学医療衛生学部の佐野肇教授(聴覚療法学)によると、中高年が聞こえづらくなる主な原因は「加齢性難聴《だ。鼓膜の奥にある渦巻き状の「蝸牛《の中にある音を感じる「有毛細胞《が長年音にさらされ、徐々に脱落して生じる。有毛細胞は再生せず、入り口近くにある高い音を感じる細胞から減る。軽いうちは自覚しにくい。

軽度・中等度の難聴向けの補聴器は主に、耳あな型と耳かけ型がある。城北補聴器大山店(東京都板橋区)の野田善敬店長によると、共に充電式で、スマートフォンで機能を調整できるものが標準になりつつある。耳あな型ではワイヤレスイヤホンのようなデザインが増え、耳かけ型はカラフルで、音が出る小さなスピーカーが耳のあなにおさまるRTC型という小型で目立だないタイプが増えてきている。

認定補聴器技能者でもある野田さんの店には、補聴器を手に「合わない《と相談に来る人も多い。耳の形や聴力による向き上向きもあるといい、技能者がいる店で対面で相談・調整したほうが「より合った補聴器を見つけやすい《と話す。

「集音器《と違い、補聴器は医療機器だ。でも、補聴器販売店でなくても、通信販売で購入できるものもある。

「買う前にまず、耳鼻科を受診して《と、佐野さん。中耳炎など治療可能な難聴もある。補聴器が必要となれば、どんな音が聞こえにくくなっているかを診療情報提供書に書いてもらい、補聴器の調整に役立てられる。国税庁によると、日本耳鼻咽喉科学会の補聴器相談医が診断し、認定補聴器技能者がいる店で購入すれば、医療費控 除の対象になる場合もあるという。

「毎日長く着ければ、補聴器を通した音に脳が2週間ほどで慣れるので、使い続けてほしい《と佐野さん。加齢性難聴の悪化を抑制するには、生活習慣病の予防も大切だ。「年に1度は耳鼻科へ《と話す。(寺崎省子)


(出典:朝日新聞、2021/11/06)

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