【「呼吸《抑えて鮮度保つ】

野菜の保存

冷蔵庫を開けて、「なんてこった《と思ったことが何度かある。買っておいた野菜が、しおしお、ぶよぶよ、変色。まだそんなに日もたっていないのに。何でもすぐ冷蔵庫の野菜室に入れていたが、それがよくなかったのだろうか。

収穫された野菜も生き物だ。呼吸をすることで糖質や有機酸を分解してエネルギーに換える。呼吸をするほど栄養価が落ちて、品質が悪化する原因になる。このため、一般的には冷やした方が野菜は日持ちする。温度が低い方が呼吸が少なくなるためだ。10度下がると、呼吸は半分ぐらいになると言われている。

収穫後の青果物の品質などを研究する晨研機構の永田雅靖・流通技術・新用途開発グループ長(園芸利用学)も「呼吸をいかに抑えられるかが肝。基本的には冷やせは品質変化を遅くできる《という。

永田さんたちがまとめた「野菜の最適貯蔵条件《によると、キャベツ、春菊、タマネギはO度、ゴボウはO~2度、アスパラガスは2・5度が最適だ。

だが、寒さに弱い野菜も多い。キュウリ、カボチャ、サツマイモ、ショウガ、スイカなどの最適温度は10度台。冷蔵庫に入れっぱなしにすると低温障害が起き、風味も変わる。ナスの表面にポツポツ穴があいたり、トマトがぶよぶよしたり、バナナが真つ黒になるのも低温障害だ。

永田さんは「室温でいいというよりは、冷やしすぎたらダメな野菜と理解する方がいいかもしれない《と助言する。

冷蔵庫に入れて問題のない野菜も、おいしく食べられる期間は様々だ。限界の目安は、ネギが10日、ブロッコリーが10~14日。ダイコンは2~3月、ゴボウは3~4月。この差も呼吸が大きく関係する。

アスパラガスは若芽、ブロッコリーはつぼみ、タマネギは養分を蓄えた厚い葉が重なった鱗茎(りんけい)。ひと口に野菜と言っても、食べる部位やタイミングが違い、若芽やつぼみは呼吸が激しく傷みやすい。

東京大の安永円理子准教授(ポストハーベスト工学)は「物理的なストレスがかかることでも呼吸が増える《と指摘する。

例えば搊傷だ。千切りキャベツの方が、包丁を入れていないキャベツより呼吸が増える。アスパラガスや春菊など、直立して育つ野菜は、立たせて貯蔵した方がいいという。「寝かせると、体を起こそうとしてたくさんのエネルギーを使ってしまう《

呼吸は、野菜から水分を奪うことにもつながる。水分が抜けると、しおれて昧も落ちる。加えて、表面の組織が弱り、傷つきやすくなることで、微生物が侵入して腐敗しやすくなる。

このため、温度も重要だ。カボチャやショウガ、タマネギは例外だが、葉物を中心に多くは100%近辺が最適の湿度だ。

高い湿度はポリエチレン袋に入れることで保つことができる。ただし、密閉させるのは厳禁。「袋の口は軽く折るぐらいでいい《と安永さん。酸素が枯渇すると、酸素を使わないタイプの呼吸をして、悪臭を放ち、かえって傷んでしまう。

あと注意したいのが、完熟トマトやメロンが多く放出するエチレンだ。「老化ホルモン《とも呼ばれ、ブロッコリーやホウレンソウが黄色く変色する原因になる。

永田さんは「結局、一番いいのは収穫してすぐ食べること《という。ただし、完熟前のトマトやアボカド、メロンのように少し置いて熟すのを待つ方がおいしくなるものもあり、永田さんは、それらは室温で置き、頃合いを見て食べているという。(阿部彰芳)

     


(出典:朝日新聞、2021/10/09)

戻る