【「飲む点滴」で夏の疲れ防止】

甘酒

9月に入ったものの、残暑がなお厳しい。夏の疲れた体に、甘酒はいかがだろうか。冬に熱々を飲むのもおいしいが、実は「甘酒《は夏の季語。様々な栄養素が含まれていて「飲む点滴《とも言われ、疲労回復以外にも、熱中症予防や、腸の調子を整える効果も期待できるという。冷やして飲むほか、砂糖の代わりに料理に使える。

発酵調味料の研究者で、甘酒についての著書もある東京農業大学の前橋健二教授(醸造学)は、「一年中おすすめだが、まだ暑さも残る季節の甘酒は夏ばて防止にぴつたり。ぜひ活用してほしい《と話す。

前橋さんは、甘酒の中でも特に、「こうじ甘酒《の魅力を説く。原料は米と米こうじ、水だけで、全く砂糖を加えず、米を発酵させてつくられる。健康志向を反映してか、数年前から人気だ。

甘酒にはもう一つ、日本酒を作った過程で出る酒かすで作る「酒かす甘酒《もある。こちらは砂糖で甘みを出している。微量だがアルコールが含まれるほか、水に溶けるビタミンなどの成分が日本酒の方に移っていて、こうじ甘酒に比べて少ないといった違いがある。市販の甘酒の場合、この二つは原材料欄で見分けられる。こうじと酒かすの両方を使う商品もあるという。

こうじ甘酒にはどんな栄養素が含まれているのか。前橋さんによると、甘みの主成分であるブドウ糖のほか、ビタミンB群やアミノ酸、オリゴ糖など350種以上の成分が含まれている。ブドウ糖は砂糖(ショ糖)より吸収が早く、すぐにエネルギーになる。ビタミンB群も豊富で、糖質の代謝に関わり、ブドウ糖をエネルギーにする手助けをしてくれる。甘みの割に、甘酒によって太りにくいのはこのためだという。

ビタミンB群の中でも、特に葉酸はご飯の14倊と多く含まれる。赤血球をつくるサポートをするほか、胎児の発育に重要とされる。前橋さんは、「妊娠中の場合、医師に確認のうえ取り入れて《と助言する。

その他、食物繊維も多く含まれ、腸内の環境を健康に保つのにも効果を発揮する。整腸作用のあるオリゴ糖も含まれており、甘酒をとることで、便通が改善するという実験結果もある。

いつ、どのくらい飲むのが効果的なのか。前橋さんは「むやみに多すぎるのも良くない《。1日1杯(150㍉リットル)が目安だ。飲むのはいつでも良いが、朝食や、運動の後がおすすめという。

自分でもつくれると聞き、記者も炊飯器を使って挑戦した。米1合に対し、3合の目盛りまで水を入れておかゆを作り、少し冷ましてから米こうじ200㌘を投入。混ぜ合わせた後は温度に気をつけながら「保温《状態で半日ほど待つだけだ。途中温度が上がりすぎてこうじ菌が活動しにくい状況になったのか、市販のものよりやや甘みが少ないが、無事に完成した。

普通に飲んでもいいが、砂糖の代わりにデザートや料理に使うこともできる。管理栄養士で、マルコメ広報宣伝課の多和彩織さんによると、味にコクがでる、素材がしっとり仕上がるといった利点のほか、液状のため他の調味料と合わせやすいという手軽さも人気の理由という。照り焼きや肉じゃがなどには、甘酒2、しょうゆ1の割合が目安と教えてもらった。「毎日飲むのは難しいかもしれないが、食事にも取り入れて日常的に使ってほしい《と話す。

作った甘酒に鶏もも肉をつけ込み、照り焼き風にしてみた。後味があっさりした優しい甘さで、柔らかく仕上がった。まだまだ続く暑さを、甘酒の力も借りて乗り切りたい。(杉浦奈実)



(出典:朝日新聞、2021/09/11)

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