【心身整える就寝前の「3行《】

日記

新型コロナウイルスの流行で、日常生活や仕事をとりまく環境ががらりと変わった。ストレスを感じながら過ごしている人も多いのではないか。そんな日々の暮らしに「日記《を取り入れてみてはどうだろうか。健康にプラスになるとして、医師が勧める効果的な日記の書き方がある。

「3行日記《を書くことを勧めるのは、順天堂大学教授の小林弘幸さんだ。①今日いちばん失敗したこと、②今日いちばん感動したこと、③明日の目標*の順番で1行ずつ合計3行、夜寝る前にゆっくりと書く。「3行日記をつけると、体のライフラインである自律神経が整い、心身をコントロールできるようになる《と小林さんは言う。

自律神経は、内臓や血管などの働きを調整したり、代謝や体温を整えたりする神経で、「交感神経《と「副交感神経《がある。交感神経は、車に例えるとアクセルの働きをし、活動している時間帯は交感神経が優位になる。副交感神経はブレーキの働きをし、リラックスしている時や夜に寝ている時間帯には副交感神経が優位になる。

ストレスなどで、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて一方に偏る状態が続くと、心身のさまざまな上調が出る。血流が悪くなり、ウイルスや細菌から身体を守ったり病気を避けたりする免疫力も落ちる。

コロナのストレスによる影響について、小林さんは「コロナ禍が長引いて慢性的なストレスや疲れが続き、自律神経の総合力が落ちている《と言う。日記で自律神経のバランスが整うのは、「落ち着いた時間にその日のことを振り返ると、呼吸が整ってくる《ためという。3秒で吸って6秒ではくイメージだ。書く際は、寝る前に、落ち着ける場所で1人になる。日付と曜日を記入し、3テーマをそれぞれ1行ずつ、手書きでゆっくり、丁寧に書く。毎日でなくてもよいそうだ。

日記が心身の健康にもたらすよい影響については、様々な研究がある。こうした研究に詳しい精神科医の最上悠さんによると、海外では30年以上前から研究の論文が発表されている。効果がある日記の特徴は、出来事だけでなくつらかったことや楽しかったことなど、どう感じたか「感情《を書くことだ。「たまっていた感情が発散されて苦悩がいやされ、自律神経や免疫などの機能がよくなる《と最上さんは言う。

例えば血圧への効果。米国の研究グループが、高血圧と診断された男女を、「感情日記《を書くグループと、感情にはふれず日常生活について書くグループに分け、3日連続で1]日20分間、日記を書く実験をした。1ヵ月後の血圧測定で、感情日記のグループの血圧の平均は、やや高めながらも正常僖の範囲内に明らかに低下していた。

他にも、感情日記は感情抜きの日記のグループに比べて、上眠の改善、傷の治りが早い、関節リウマチの症状が軽くなる、B型肝炎ワクチン接種後に免疫力の指標となる抗体量が増えた、エイズウイルスに感染した患者の免疫力が高まりウイルスの量が減ったIといった効果の研究がある。

怒りや恨みをはき出すのに慣れてきたら、心底にある本音の感情まで表現してみることを最上さんは勧めている。手書きでもパソコンでもよく、毎日でなく七もよい。ただし、うつ病などの診断を受けていて、深い感情を書くとかえってつらくなり過ぎる人は無理をしてはいけない。最上さんは「病気や症状がある人はまず医学的な治療を受けることが原則だが、それに加えて日記を取り入れるとよい。予防にも効果がある《。(神田明美)



(出典:朝日新聞、2021/07/03)

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