【自分に「ぴったり」のだいご昧】

スーツをオーダー

コロナ下で在宅勤務が中心に。この1年でスーツを着る機会がめっきり減ったが、それでも出社時は必ずスーツ。でも、「似合わない」のが悩みの種だった。

39歳の私は身長168aで体重は75`。服を買いに行くと、スポーツをしていないのに「ラグビーをしていたんですか」と聞かれるほど、胸囲もある。ウエストも太い。

既製スーツを扱う店でよく勧められるのが、がっしり体形の「AB体」で身長が175aほどに適した「6号」。ただ、これだとジャケットの長さがお尻が隠れるほどになってしまう。「5号」にすると、前のボタンがしまらない。自分に合うものがなかなか見つからず、モヤモヤしていた。

「既製服だと体に合ったものがなかなか見つからず、多くの人が我慢して着ているのが実態です」。そう話すのは、テーラー(仕立屋)などが加入する東京都洋服商工協同組合理事長の灰野(かいの)廣美さん。既製だと短期間で比較的安価で手に入るというメリットはあるものの、選べるサイズやデザインには限界がある。「体に合ったものを着ると、仕事のモチベーションも上がりま す。オーダースーツに挑戦してみては」

高価なイメージがあり、縁がないと思ってきたオーダースーツ。だが、最近は専門店も増えている。「2着で5万円から」という店も。調べてみると、オーダーにもいくつかの種類があり、必ずしも手が届かないものではなさそうだ。

一つは、誰もがイメージする「フルオーダー」。テーラーがその人の体形を細かく採寸した上で、型紙から作製する。生地も 自分の気に入ったものを選ぶことができる。仮縫い時に試着もでき、完成時のイメージが想像しやすい。裁断や縫製など手作業で行う部分が多く、「技術力も必要です」(灰野さん)。数十万円ほどの費用がかかるが、自分にぴったりのスーツができる。

一方、「イージーオーダー」や「パターンオーダー」と呼ばれるものがある。最近増えているのがこれらの店だ。「イージー」は、個人に合わせた型紙は作らないものの、体形に合わせて型紙を可能な範囲で修正して、スーツを仕立てていく。既製に近いイメージの「パターン」は、事前に用意されているサンプルの中から自分の体形に近いものを選び、着丈や袖丈などを調整する。いずれも生地を選ぶことは可能で、フルオーダーほど高くない。厳密な定義があるわけではなく、店舗によって異なる場合もある。

高島屋日本橋店(墓只都中央区)で紳士服などを担当する宮本勇志さんによると、ここ最近は既製スーツからオーダースーツの購入へ切り替える客が増えているという。コロナ流行下で脱スーツの流れは加速しそうで、「数をたくさん持つ必要がなくなり、上質なスーツを1着は持っておきたいというニーズがある」と分析する。

同社では、手軽に「オーダー」を感じてもらおうと、「スタイルオーダーサロン」を展開。用意した四つのスーツの型から選び、着丈や袖丈などを調整していく。生地や裏地、ボタンなどを選ぶことも可能で、5万円ほどから作れる。

値段のほか、テーラーとのやり取りに尻込みする人もいるかもしれない。灰野さんは「一度試してみれば良さを感じてもらえる」と胸を張る。「テーラーは個人個人の希望を聞きながら作るのにやりがいを感じている。自分の意見をテーラーにぶつけながら作り上げるだいご味もぜひ体験してみてほしい」と話す。(有近隆史)



(出典:朝日新聞、2021/01/30)

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