【健やかな爪、心潤す】
自分を彩るネイル
きれいな爪は心を潤し、周りの人が見ても気持ちがいいものです。でも、年を経る
につれ爪の縦筋が気になる、自分で上手に色を塗れない……。そんな悩みもあるよう
です。新型コロナウィルスの影響で家で過ごす時間が多いなか、自分で手軽に爪のお
しゃれを楽しんでみませんか?
NPO法人日本ネイリスト協会理事で「ネイル大全」の監修者でもある小笠原弥生さん(55)は「ネイルというと、鮮やかな模様を描くなどアートを施すことと思われ
がちですが、実は大事なのは爪や爪まわりを整えること。顔でいえば美しい素肌作り
です。きちんと手入れすると、健やかできれいな爪を演出できます」と話す。
ネイルケアのポイントは長さを整える、つやを出す、保湿の三つ。まず、長さを整
えるには爪切りではなく、やすりを使う。爪切りは爪に圧がかかりやすいので、爪が
割れやすく、二枚爪の原因にもなるという。爪を傷めないよう往復してごしごし削
らず、一方向に動かそう。やすりは、ドラッグストアなどで数百円で買える。
つやを出すシャイナーは、細かい面とつやを出す面があるのが一般的。爪が薄くな
りすぎないよう、月1回を目安に。「色がはげるのが嫌な人や、仕事がら色は控えた
い人は、つややかにするだけで十分。清潔感のある美しい指先になりますよ」
そして、欠かせないのが保湿だ。甘皮、爪の裏と皮膚の間にキューティクルオイル
(千円前後)を適量垂らし、軽くマッサージ。爪まわりが保湿されると爪も映える。
「日常の習慣に」と勧める。年を重ねると爪が割れやすかったり、皮膚がささくれた
りするのは乾燥が主な原因という。
カラーリングの手順は四つ。ベースコートは色素沈着を防ぎ、発色や色持ちを良く
する。爪先の断面にも塗るのがポイント。爪の凹凸をカバーするもの、爪を補強する
成分入りのものなどがあるという。
ポリッシュ(マニキュア)を塗る際も、断面を忘れずに。はけを容器の囗でしごき、爪の際から爪先へ3〜4回、スッスッと一気に塗ると厚塗りになりづらい。ムラは気にせず2度塗りで整える。つやを出すトップコートで完成だ。
色選びに悩んだら肌なじみのよい薄いピンクやベージュを。シニア向けに夏にお勧めの色を尋ねると、「上品な輝きのパールホワイトがさわやか。クレージュも人気です。赤や黒など濃い色ははげると手は目立つので、足の爪で遊んでみては?」。
高齢者施設などを訪ねネイルを施す福祉ネイリストを育成する日本保健福祉ネイリスト協会代表理事の荒木ゆかりさん(59)には、忘れられない出会いがある。
言葉が出なかったのに、ベージュ色を塗った爪に「きれいね」とほほ笑んだ脳梗塞の女性、つやが出た自分の爪を見て、「こんなに気分が高揚するとは」と驚いた70代の男性。夫から「色のついた爪で料理を作るな」と言われてちゅうちょしていた人が、つや出しで魅力に目覚め、カラーリングを楽しむようになったこともあった。
「お化粧や髪形などと違い、爪は鏡がなくても何度も目で見て美しさを確認し、心
地良い気持ちを思い出させてくれる。それは生きる力にもなる」と荒木さんは話す。
同協会学術顧問で吉備国際大学の佐藤三矢准教授(48)らが2019年、施設の認知症の女性高齢者に行った調査では、カラーリングを6ヵ月施した人は、しない人に比べ、周囲といきいきとした交流を積極的に行うようになり、ふいに外に出て行くなどの行動が改善されたり、暴言・暴力が軽減されたりする傾向がみられた。佐藤さんは「ネイルのように自分を彩るおしゃれは、前向きな気持ちや、活動的な生活を後押ししてくれる。男女を問わず介護予防につながる可能性もある」と話す。(森本美紀)
(出典:朝日新聞、2020/07/25)
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