【駱駝体操と野口体操 脱力の技術で日常からの回復を】

緊張で疲弊が続く日常から回復しようと、休から力を抜く技術を調べました。

舞踏家の麿赤児(まろあかじ)(75)が主宰する舞臍集団「大駱駝艦」の稽古場で、麿さん 開発の「駱駝休操」を、弟子の塩谷智司さん(38)が指導していた。「皆さんは人間の形をした革袋で、中に水が入っている。内臓や骨は水の中にプカブカ浮いている。革袋をちょっ揺らそう」。寝そべったメンバー7人の締まった体が一瞬で人形のように脱力、軽く揺れた。

「戦前・戦中、そしてそれを踏襲したような戦後の休操は、ビシビシと力を入れて働いを鼓舞するような体操が多かったが、この体操はむしろ平和的な体操だ。自身の身体を内省するように、脱力する時はし、必要な時には筋肉を緊張させ最大限の力を出す。武道でもスポーツでも、極めた人はその点に気づいているのではないか」と麿さんは言う。

駱駝体操は麿さんが約55年前、東京芸術大学名音数授だった故野口三千三(みちぞう)氏か ら「野口体操」を学んだことに始まり、舞踏家の道を究める中で独白に進化させた。肉体のメンテナンスとともに、身体表現の幅を広げる効果があるという。

では、源流の野口体操とはどんなものだろうか。野口氏を初代講師として始まった朝日カルチャーセンター新宿教室の講座は今まで約40年間続いている。

「力を抜くとはどういうことか、という実感がないと、本当の意味で力を入れることもわからない」。現講師の羽鳥操さん(69)が15人ほどの受講生に説いた。いわゆる前屈も、腕をだらりと下げ、右に左に体をゆする。体から力を抜き、ゆらゆろとリラックスさせていた。

狭いスペースでできる基本的な野口体操に「やすらぎの動き」がある。床に腰を下ろし、両足を開く。足は力を抜き、つま先は天井方向に向ける。上体を前や左右に息を吐きっつゆったりと倒し、戻す。どの程度倒せるかは骨盤がどの程度自由に傾きを変えられるか次第だが、羽鳥さんは「無理しないで」と言う。

高度成長期に「コンニャク体操」と呼ばれて異端視された野口体操も、価値観の違う現代にはぴったりだ。(松尾一郎)



(出典:朝日新聞、2018/10/20)

戻る