【「高たんばく・ヘルシー」、ジピエが人気 適正処理しておいしく】

シカやイノシシなどの肉「ジビエ」がブームだ。東京都内を中心に取り扱う飲食店が増えた。ただ、衛生管理のガイドラインはできたものの、感染症のリスクがある肉が出回る可能性はゼロでなく、注意が必要だ。

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東京都港区のテストキッチンに先月、ロースやモモ、スネなどさまざまな部位のシカ肉が並んだ。NPO法人日本ジビュ振興協裔会(埼玉県)のシェフがビデオカメラに向かい、料理しやすいように加工する方法を説明した。部位によっては調理に手間や知識が必要なため、ビデオを講習などで利用していく。

ジビエは硬い、臭いというイメージを持つ人もいる。野生の動物を捕獲したときに血を抜く方法や、仕留めてから食肉加工するまでの時間、さばき方、発情期かどうかなどによって大きく昧が変わるという。

協議会理事長で、長野県のフランス料理店のオーナーシェフ、藤木徳彦さんは「ジビエは適正に処理すればおいしい。調理の幅を広げていきたい」と説明する。

栄養面はどうか。長野県工業技術綺合センターの唐沢秀行・研究企画員の2014年の論文によると、県内で掃獲されたシカ39頭の肉の成分をほかの畜肉と比べたところ、乾物100cあたりのたんばく質は牛肉や豚 肉、鶏肉より多く、脂質やエネルギーはこれらの畜肉より少なかった。シカ肉のカルシウムや鉄は豊富だが、オレイン酸は少なかった。唐沢さんは「脂肪酸の量など優れている点ばかりではないが、肉の違いを知って特徴を理解してほしい」と話す。

ぐるなび総研は14年、話題になった料理を選ぶ「今年の一皿」にジビエ料理を選んだ。シカやイノシシの肉がメニューにある飲食店が全国に600店(15年5月時点)確認できた。近年急増していて、シカ肉のハンバーガーやカレー、イノシシ肉をのせたそばを提供するチェーン店もある。

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安全面の懸念はある。野生動物は処理の過程で雑菌が繁殖したり、E型肝炎ウイルスを持っていたりするためだ。国内で感染は確認されていないが、海外ではシカがプリオン病に感染していた例も報告されている。

流通させるには、全国に約170ある認可を受けた食肉処理施設で加工する必要がある。また、厚労省は14年にシカやイノシシの肉の衛生管理のための指針を公表。腹部に着弾した動物は食べないことや、屋外での内臓摘出は処理施設へ運ぶのに長時間かかる場合などに限ること、食べるときは75度で1分以上加熱することなどを定めた。

ただ、現状では食肉処理施設の許可を受けていない場所で処理した肉の販売や、指針で認められていない生肉を「シカ肉の刺し身」などと提供する店舗もあるとみられる。藤木さんは「見分けるのは難しいが、分からなければ店員に確認してみてほしい」と話す。(合田禄)

[インフォメーション]

日本ジビエ振興協議会のホームページ(fttp://www.gibier.or.jp/)ではジビエの特徴の解説や、イベシトの情報を掲載している。

厚生労働省の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」は同省のサイト(fttp://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032628.html)で確認できる。



(出典:朝日新聞、2016/01/23)

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