【秋の登山、自分の実力を見極めて ふだんから体調管理を】

山々が色づく季節。体力づくりやリフレッシュにもなる登山ですが、山でのトラブルも増加しています。体力や体調を見極めながら、安全に楽しむポイントを専門家に聞きました。

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「登山は心肺機能や筋肉・骨を強化し、脂質・糖代謝を改善するなど、人間の能力をバランスよく鍛えられる生涯スポーツです」

鹿屋体育大の山本正嘉数授(運動生理学)はこう話す。一方で「登山は想像以上にハードな運動。実力に合わせて上手に加減しなければ、事故につながりかねないが、ベテランでも加齢による体力低下などを見極めるのは難しい」と指摘する。

警察庁のまとめでは、2014年の山岳遭難者(自然災害を除く)は2794人で、統計のある1961年以降で最多だった。道迷い(41・6%)や滑落(17・9%)、転倒(14・4%)などが原因だった。

長野県山岳繚合センターが昨年夏の2カ月間に遭難した76人に聞いたところ、登山歴10年以上の人が半数を占めた。

運動の強さを示す指標「メッツ」で、安静時を「1メッツ」とすると、普通〜やや早歩きは3メッツ台。一方、低い山のハイキングでは6メッツ台になる。「日本百名山」のほとんどのような本格的な登山は7メッ ツ台で、ジョギングに相当する。数字が大きいぼど心臓などに負担がかかる。登山中はそれを長時間続けることになる。

登山に向けたトレーニングとして多くの人が行っているウォーキングは3〜5メッツ台。それだけでは、7〜8メッツ台になる本格的な登山には有効とはいえない。まず、身近な低い山でトレーニングをすることが効 果的だという。

科学的なデータを元に山選びができるように、消費エネルギーや距離、標準的な登山時間などから、山を「グレード」別に分ける動きも進んでいる。

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一方、山岳遭難者で、病気が原因のケースもある。心筋梗塞や脳卒中などによる突然死も起きている。酸素濃度や温度が低い山の上では、普段より体に負担がかかることがあるためだ。

山の上で発病するリスクを軽減するには、「普段からの体調管理が重要」と、日本登山医学会・国際山岳医で沢田はしもと内科の橋本しをり院長は話す。

年1回は健康診断を受け、高血圧、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病の持病があれば改善する。夜行日帰りなどの無理な登山計画は避ける。登り初めはゆっくり歩いて、動機や息切れなどその日の体調をチェックすることも大切だという。

秋は日が短くなり、気温も下がって天候も変わりやすい。橋本さんは普段の登山道具の中でも特に重視したい持ち物として、@食料・水分AヘッドランプB防寒具・雨具を挙げる。「地図でのルート確認を含め、事前準備が大事」と念を押す。(伊藤綾)

[インフォメーション] 長野、新潟、山梨、静岡の4県は、体力的負担度と技術的難易度で登山ルートの難易度を示す「山のグレーディング」を公表している(https://www. pref.naganolg.jp/kankoki/sangyo/kankou/gure-dezingu.html#g)。天候や残雪などの状況も考慮した上で、「力量に合った山選びの目安にして」と呼びかけている。




(出典:朝日新聞、2015/10/10)

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