【運動前は「動的ストレッチ」が有効 動作つけて筋肉を伸縮】

秋の運動会シーズンで久しぶりに体を動かす人は、けがをしないようウォーミングアップが大切です。運動前のストレッチのやり方は、昔の常識が見直されてきています。動作を伴って筋肉を伸び縮みさせる「動的ストレッチ」を導入することで、動きが円滑になり、力を発挿しやすくなるようです。

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ストレッチというと、ゆっくりと筋肉を伸ばして静止する「静的ストレッチ」が思い浮かぶ。しかし、東海大スポーツ医科学研究所の有賀誠司教授は運動前には主に『動的ストレッチ』が有効だ」と話す。静的 ストレッチは、運動後のクールダウンに向いているという。

動的ストレッチの一つとして、軸足でバランスをとりながら、足を前後に振る「レッグスイング」がある。腰を反らせたり丸めたりせず、股関節を動かすことがポイントだ。最初の2回はゆっくり足を上げた状態で1、2秒間止め、徐々に速く大きく前後に10回動かす。太ももの前の筋肉を収縮させると後ろ側の筋肉はリラックスし、後ろ側を収縮させるとその逆になることで、走るときの筋肉の正しい動きを練習できるという。

一方、静的ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、可動域を広げる効果がある。ただ、筋肉には伸ばすと反射的に収縮する仕組みがあり、静的ストレッチをやりすぎるとその反射の感度が下がって、瞬発力が低下する恐れもあるため、運動前のやり過ぎには注意が必要だ。

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有賀さんは「運動前の静的ストレッチは1980年前後から国内で行われてきたが、アスリートの間では20OO年ごろから、学校の指導などでは10年ごろから見直され、運動前に動的ストレッチが取り入れられるよ うになった」と話す。

酪農学園大の山口太一准教授(トレーニング科学)は03年、大学生ら11人を対象に、ストレッチが足を伸ばす能力にどう影響するかを調べた。動的、静的ストレッチと何もしない場合の3条件の前後で、足を伸ばす能力を測定したところ、静的ストレッチ後に5・1%低下、何もしなかった後は4%低下したが、動的ストレッチ後は10・1%増加した。動的ストレッチで短距離走やジャンプカなどの瞬発力が向上するという米英豪などの研究も多数ある。

けがの予防効果についても、今年発表された米国の研究では、動的ストレッチのみと、動的ストレッチと静的ストレッチの両方の比較で、けがをする割合に差がなかったという。

山口さんは「けがの予防を考えた場合、まずランニングやウオーキングで体を温めることが最も大切。瞬発力を高めるためには、静的ストレッチよりも動的ストレッチの方が効果的なことは間違いない」と話す。けがや疲労があったり、体がとても硬かったりするなら、運動前に少し静的ストレッチも取り入れるとよいという。(合田禄)

[インフォメーション]

久しぶりの運動では太ももの肉離れやアキレス腱の断裂に特に気をつけたい。ウォームアップでは、5分間のジョギングと、走るときに使う筋肉を中心に動的ストレッチを2種目ほどやるとよいという。有賀さんの著書「ストレッチ大全」(成美堂出版)では、様々な種類の動的ストレッチや静的ストレッチのやり方を解説している。




(出典:朝日新聞、2015/09/26)

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