【「ヘッドホン・ロック難聴」を防ぐ 音量抑え、耳を休ませる】

ヘッドホンやイヤホンを使って音楽を聴くとき、周りが騒がしいとつい音量を上げてしまいがち。しかし、大きな音を長時間聴いたために聴力が低下する「音響外傷」を招くことがあり、注意が必要です。

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ロックコンサートなどでスピーカーに近い席で音楽を聴いたあと、ずっと耳鳴りや耳詰まりなどが治らない─。岩佐耳鼻咽喉科(東京都中央区)には、このような症状を訴える人たちが年に30〜40人訪れる。

内耳の蝸牛(かぎゅう)には、音の振動を感じるセンサー役の細胞がある。それぞれ感じる音の高さ(周波数)が決まっているが、大きな音を長時間聴いた場合、特に高音担当の細胞が壊れたり、抜け落ちたりしやすい。これが音響外傷で、傷ついた細胞は、再生しないといわれる。

90〜120デシベルの大きさの音を聴くと体調などによっては耳鳴りや耳詰まりなどの症状が出ることがある。ロックコンサートでは110〜120デシベルの音が出るとされており、「ロック難聴」につながる。

同じような症状が、ヘッドホンやイヤホンを使う人にも起こる恐れがある。

岩佐英之院長は「高性能なヘッドホンの中には120デシベル近い音が出るものもある。ボリュームを上げすぎると『ヘッドホン難聴』のリスクが高まる」と指摘する。

実際、電車内や街中などの騒音下では、音量を上げがちだ。

東京都は2008年、イヤホン(ヘッドホン=耳覆い型・耳載せ型イヤホン=を含む)を使ったときに「快適」と感じる音量を調査した。無音の部屋と、雑踏や地下鉄内に近い73・2デシベルの騒音がある部屋とで、20代の男女41人にそれぞれ4種類のイヤホンをつけて音楽を聴いてもらった(回答数は計164)。

騒音がない部屋では、静かな60デシベル未満の音を「快適」と感じた人が目立つが、騒音下では、通常ならうるさいと感じる70デシベル以上の音が快適、と答えた人が多くなった。

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「ヘッドホンをつけて音楽を聴くときは、周囲と会話できる程度の音量が理想。感受性には個人差があり、一概には言えないが、疲れや睡眠不足は内耳にダメージを与えやすいので特に注意が必要」と岩佐さん。飲酒時も音量を上げがちになる。

WHO(世界保健機関)は2月、「個人用のオーディオ機器の使用、娯楽施設などの騒音で、世界の多くの若者に難聴の リスクがある」と警告。「騒音にさらされる時間の許容レベルは、85デシベルは1日最大8時間、100デシベルは1日最大15分間」などと推奨した。

慶応大耳鼻咽喉科の小川郁教授は「大きな音を聴き続けていると、自覚のないまま聴力が低下していることがある。軽症であれば、回復の見込みはあるので、異常を感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診して」と話す。(ライター・高山敦子)

[インフォメーション]

ヘッドホン難聴の説明は日本学校保健会のポータルサイト「学校保健」 (http://WWW.gakkohoken.jp/)の「特集」にある「第12回児童生徒の耳・鼻・のどの健康」に詳しい。日本耳鼻咽喉科学会のサイト(http://www.jibika.or.jp/citizens/index.hyml)の「子どものみみ・はな・のどの病気Q&A」も参考になる。




(出典:朝日新聞、2015/08/22)

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