【楽食・楽動・楽眠・楽話を 「ホルモンカ」高めて快適な生活】
46歳で乳がんを経験したタレントの山田邦子さん(55)は、「ホルモンカ」に注意した生活で体調を取り戻しました。心身ともリラックスして、楽しいと感じているときに、いいホルモンがたくさん分泌されるという考え方です。具体的にはどんな生活が望ましいのでしょうか。
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かつての山田さんの食生活はすさまじいものだった。『オレたちひょうきん族』などの人気番組に出演していたこともあ
り、朝食はぬき、昼食はお弁当、深夜の焼き肉、未明までの飲み会は日常茶飯事だった。
しかしがんを患ったあとは、生活を一変させた。バランスのよい食事を腹八分目で食べる。早寝早起きを心がけ、日光を浴びながら、足早に歩く。スポーツジムにも通い始め、最低でも週1回、できれば週3回、約2時間体を動かす。
以前はひとりで過ごすことが好きだったが、いまはみんなで楽しむことが増えた。乳がんを早期に発見する啓発活動や東
日本大震災の被災者を励ますボランティア活動にも力を入れ、「誰かのためになっている」と実感する機会を増やした。
「山田さんの生活は『ホルモンカ』を高める優等生の生活。大事なのは、いかにホルモンを上手に分泌する生活を送るかなんです」と、慶応大医学部の伊藤裕教授(腎臓内分泌代謝内科)は話す。
伊藤教授によると、ホルモンカを高めるキーワードは「楽食、楽動、楽眠、楽話」だ。
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例えば、「おなかがすいた」という時間を持つことにより、「グレリン」という物質が胃から分泌される。グレリンは、細胞のミトコンドリアを増やし「強くする」という。
運動すると血の巡りがよくなり、心臓や血管から余計な塩分や水分を体外に排出するホルモンである「ナトリウム利尿ペプチド」が分泌され、血圧や血糖値が下がる。
また、部屋を暗くして十分な睡眠を取ることにより、脳の中央にある松果体から、生体時計のリズムを調整し活性酸素を除去するメラトニンが効率よく分泌される。
さらに「誰かとともに生きている」という実感を持つことにより、オキシトシンと呼ばれる愛情をつかさどるホルモンが脳の下垂体から分泌される。
4月にあった日本内分泌学会の学術総会は「内分泌至上主義」をテーマに掲げ、ホルモンが健康に果たす役割について取
り上げた。現代医学の大きな課題である心の病やがん、認知症の治療の可能性についても話題になった。
最近の研究では、栄養やスポーツ以外にも、「どきどきする勝負事に挑戦する」、「困った問題は翌朝に持ち越す」「愚痴を思いっきり言ってみる」「週末に自分への『ご褒美』を予定に入れる」などもホルモンの分泌を促すことがわかってきたという。(石川雅彦)
[インフォメーション]
ホルモン全般についての入門書としては、伊藤裕教授の近著『なんでもホルモン』(朝日新書)がわかりやすい。
また、女性に関心の高い女性ホルモンとダイエット、美容に関する情報は、健康機器メーカーのタニタのホームページ(fttp://www.tanita.co.jo/health/detail/18)で解説されている。
(出典:朝日新聞、2015/06/13)
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