【「怖い感染症」を媒介、マダニを防ごう 肌の露出減らすのが肝心】

レジャーに山菜採りと、野外に出る機会が増える季節。楽しい思い出にするためにも、蚊やハチなどの昆虫類、ダニやクモなど崖虫以外の節足動物による虫さされは避けたいもの。特にマダニには注意が必要です。

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ヒョウヒダニなど室内にいるダニと違い、マダニは動物が通る草むらなどに潜む。体長1〜数_だが、動物やヒトの血を吸いl〜2aになるものもいる。

マダニを介してうつる病気の一つが、ウイルスが原因の感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)だ。国立感染症研究所によると、潜伏期間は6日〜2週間。高熱が続き、下痢や嘔吐などの症状が出る。特効薬は無い。

日本では2013年1月に初めて患者が報告された。山口県で12年秋、成人女性が高熱や嘔吐、下痢などの症状が出て亡くなっていた。白血球数が極端に低下し血小板数も減っていた。感染研で女性の血液を調べ、SFTSウイルスが見つかった。

これまで感染研に報告された患者は愛媛19人、宮崎18人(高知14人など和歌山・兵庫以西で計110人。うち32人が亡くなった(15年4月8日現在)。「20、30代の若い患者もいる。亡くなった人は60〜80代が多く報告数では致死率は約30%。マダニにかまれるリスクを下げることが大切だ」と感染研ウイルス第一部の西儀政幸部長。

日本にはフタトゲチマダニなど47種類のマダニがいる。感染研昆虫医科学部の沢辺京子部長によると、どのマダニが媒介するかは特定できていない。シカやイノシシなどが人里へ入り、マダニとヒトの距離が近くなり、農村部の民家近くでも被害が出ているという。

マダニが媒介する病気には、日本紅斑熱や北海道と信州に多いライム病もある。

兵庫医大の夏秋優准教授(皮膚科)によれば、紅斑熱は高熱が出てa大の淡い紅斑が全身に現れ、かまれた痕にかさぶたが付いていることが多い。「基礎疾患がある人や高齢者は治療が遅れると、まれに亡くなることもある」。ライム病はさし口周辺に淡い赤斑ができ、大きく広がっていく。治療せず放置すると、関節痛や神経症状が出る。

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マダニを防ぐには肌の露出を減らすことが肝心。防虫スプレーを使える人は、目的地に着いたら服の上、特にひざから下に吹きかけるといい。子どもが薬剤を吸い込まないよう、服に吹きかけてから着せたり、大人の手に吹きかけて皮膚に塗ったりするといい。アブやブユ(ブヨ)などの虫さされも防げる。

野外から帰ったら、入浴してマダニがついていないか見る。皮膚が軟らかい腕やももの内側、わきの下などに食いついていることが多い。「幼ダニは3〜4日で離れて気づかない。約2週間は体調の変化に注意し、異常があれば皮膚科などで受診を」と夏秋さん。(寺崎省子)

[インフォメーション]

国立感染症研究所のウェブサイトから、一般向けのパンフレット「マダニ対策、今で きること」をダウンロードできる。日本皮膚科学会のウェブサイトの「皮膚科Q&A」 (https://www.dermatol.or.jp/)の「マダニ類による予期せぬ感染症」や、厚生労働省の「重症熱性血小板減少症侯群(SFTS)に関するQ&A」も参考になる。




(出典:朝日新聞、2015/04/18)

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