【温泉、持病があっても安全に楽しむ 血圧下がりすぎに注意】

湯けむりが恋しい季節です。身も心も芯から温めてくれる温泉ですが、持病のある人は、温泉の作用が逆効果になることも。体に優しく入る心得を専門家に聞きました。

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群馬県の沢渡(さわたり)温泉。無色透明の硫酸塩泉で、なめらかな肌触り。地域の共同浴場には、早朝から地元の人がやってくる。「昼までぽかぽかするよ」。

沢渡温泉のような硫酸塩泉のぼか、塩化物泉、炭酸水素塩泉など」温泉の成分はさまざまだが、温熱効果は多くの温泉に共通する。塩類を含んだ温泉では、単位体積あたりの熱エネルギーが水道水に比べると大きく、体は早く温まる。成分が皮膚のたんばく質や脂質と結合して薄い膜をはり放熱を妨げるため、ばかぽかも長続きする。

埼玉医科大の倉林均教授によると、温熱効果にくわえ、ごく微量の炭酸ガスや硫化水素ガスが直接皮膚に浸透して、血管を構成する平滑筋がゆるみ、血管が拡張し、血圧が下がる。

ただ、注意が必要なのは、血圧を下げる薬をのんでいる人やもともと低血圧の人の場合。温泉で下がりすぎる可能性があるからだ。

人間の血圧は、朝8時ごろから上がりはじめ、日中高くなる。夕方6時ごろから下がりはじめ、寝ている間は低くなるという日内リズムがある。血圧が下がりすぎるのを防ぐには、深夜や早朝を避けて、午後から夕方にかけての時間に入浴した方が安心だ。

飲酒も要注意。おばれてしまう危険だけではない。酔っていないつもりでも、お酒は血管を拡張させ血圧を下げる。温泉でさらに下がる。利尿作用で水分不足にもなりやすい。入浴前後、寝る前など水分補給をこまめにして、手足のしびれやろれつが回らないなど脳梗塞のような症状が見られたら、すぐ受診したほうがいい。

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「『雪見ぶろ』も持病がある人やお年寄りは避けたほうがいいですね」と倉林教授。健康な人の協力で、真冬に外気温0度の屋外に出てから熱い露天ぶろに入浴してもらった実験では、血圧が乱高下していた。体に不安がある人は少し暖かくなってから「花見ぶろ」を楽しもう。

一方、温泉は、浮力で関節への負荷が減るうえ、水の粘性抵抗は空気の十数倍といわれ、リハビリにも向いている。群馬リハビリテーション病院の眞塩清院長は「家のおふろは狭いが、温泉ならゆっくり手足を曲げ伸ばししたり、足を開閉したり、ストレッチもできる」と話す。

熱い温泉は避けて、ぬるめで長湯にならない程度にゆっくりつかりながら、が良いという。浴室の床は滑りやすいので転倒には要注意。湯船に入るときも片足だちになるとバランスを崩しやすい。屈折率の関係で水深も見誤りやすい。手すりがなければ、湯船の縁に腰をかけ、腰をずらすようにして足を移動させると安心だ。(竹石涼子)

[インフォメーション]

心臓病や貧血などのうち重症のものは「禁忌症」とされ、温泉浴を控えるよう国が求めている。環境省の冊子「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」(ftto://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf)に詳しい。監修した日本温泉気候物理医学会のHP(http://www.onk.jp/)にも掲載されている。




(出典:朝日新聞、2015/02/28)

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