【冬場の山歩き、自分の体力を自覚して 重ね着で防寒・汗対策を】

都市に近い標高の低い山には、冬場でも山歩きに訪れる人が少なくありません。雪深くなく、空気が澄んで見晴らしの良さが期待できる一方、この時期ならではの危険も。注意点を専 門家に聞きました。

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東京都の高尾山(599b)や兵庫県の六甲山(931b)など、標高が低く、交通の便がよい山は、四季を通じて人気が高い。だが、低い山といっても難易度は様々。信州大大学院の能勢博教授(スポトツ医科学)は「自分の体力に合った山を選び、竜山計画を立てること」を事故防止の第一に挙げる。「中高年の人は若いころのイメージが強く、勘違いしやすい」

成人の体力は年々衰える。足の筋力の低下などが原因だが、運動不足だけが理由ではない。 白髪が増えたり、ご皮膚がたるんだりするのと同じように筋肉にも加齢現象が起き、「10年経つごとに、1割程度は落ちるとみていい」と指摘する。

体力を自覚した上で、冬場は特に体温管理が大切だという。体が冷えると、エネルギーを無 駄遣いし、体力の消耗が早まる。さらに、個人差はあるが、一体温が35度を下回ると筋肉が動かしにくくなり、よろめいて転倒や転落の事故につながるという。「低い山でも油断すれば、低体温症の危険は十分にある」

山歩きのポイントの一つは汗、を出さないこと。服装などの防寒対策はもちろんだが、皮膚が汗でぬれると熱が奪われやすくなる。能勢さんは「上着、セーター、シャツ、下着などを重ね着し、こまめな着脱を心がける」と助言する。下着やシャツは水分を吸って肌に張り付きやすい木綿ではなく、羊毛や化学繊維がよい。食べ物は、おにぎりなど冷たさを感じやすいものは避け、魔法瓶の水筒で温かい飲み物を持っていった方が無難だという。

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古都・京都の市街地は東西北の三方に山が連なる。その一つ、五山送り火で有名な大文字山は、街を一望できる人気スポットだ。京都市や京都府山岳連盟は、街を取り囲む約80`の山 歩きコースを整備している。連盟常任理事の松本二郎さんは「里山の雰囲気が感じられ、寺 や神社の境内も含まれる」と魅力を語る。

山はどれも1千b未満だが、街に面していても雪が積もったり、通が凍ったりすることも。「4本爪のアイゼンがあれば安心して歩ける」と松本さん。山中は局所的に雲行きや風の強さ が変わるため、「天候の注意が大事」という。冬場は日暮れが早く午後3時ごろには下山して いる余裕も必要だ。「滑落は道に迷い焦ることで起きやすい。暗くなると余計に焦る」

また、街に近くても携帯電話がつながるとは限らない。「事故などが起きれば、一人だと逃 げられなくなる。特に初心者は経験者とのグループで楽しんで欲しい」と松本さんは話す。 (阿部彰芳)

[インフォメーション]

山歩きに必要な装備はコースや季節で異なる。必要な情報は書籍や登山用品店などで集められる。「日本100低名山を歩く」(角川マガジンズ、低い山を歩く会監修、907円)では、各地のおすすめ低山や事故防止のポイントを紹介している。山歩きと体力の関係は、能勢さんの「山に登る前に読む本」(講談社、864円)に詳しい。



(出典:朝日新聞、2015/01/31)

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