【「笑み筋体操」、自然な笑いと似た効果 表情筋ほぐし気分軽く】

最近、腹を抱えて「大笑い」しましたか。ストレスの多い日常生活で「笑いたくても笑えな いよ」と、ばやき節も聞こえてきそうです。笑いは健康にもよいとされています。ストレッチで、表情筋をぼぐして笑い顔を作りやすくする奏み胱体操」を教わってきました。

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NPO法人「笑み筋体操ハッピーネット」理事で名古屋大元教授(看護学)の堀容子さんから指導を受けた。まずは準備運動から。肩の力を抜いて、ろうそくの火を吹き消すように「フー」と細く長く息を吐き出す。両手を空に向かってゆっくり広げながら、鼻から息を吸い込む 呼吸を繰り返す。「笑う時には腹筋や横隔膜を使っているので、その部分をしっかり動くよ うにしておきましょう」

次は、顔の表情筋のストレッチ。手のひらをこすり合わせて温めてから、顔全体を両手で覆 い、ぬくもりを伝える。両手をおでこに当てて、軽く指先に力を入れて「い〜かおっ!」と言いながら横に伸ばす。同じように目の周り、ほお、あごと順番に手を当てて、ゆっくり引き伸ばす。親指と人さし指で円を作り、ほおの筋肉を集めてグルグルと回したり、両手で顔全体をパン生地をこねるようにマッサージしたりもする。「二人で向き合いながらやると、百面相のようで思わず噴き出してしまいます」。約20分の体操後には血流が良くなり、顔全体がポカポカ。気分も軽くなり、自然と笑みがこばれた。

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笑み筋体操は2005年に、筑波大元教授(看護学)の林啓子さんが考案した。笑いの健康効果を調べようと林さんらは03年、糖尿病の患者に漫才を40分見てもらった。すると、退屈な講義を受けた場合に比べ、食後2時間の血糖値上昇が抑制されていた。「毎日お笑いを見て笑 うのは難しいが、表情筋のトレーニングを通して笑いを習慣にしよう」と、体操を開発した。現在、介護施設や企業の健康教室などで実施されている。30〜80代の男女22人を対象に体操前後の変化を調べたところ、抑うつ気分が軽減したほか、疲労感や眠気、頭痛、肩こりなどの自覚症状も少なくなっていた。

笑み筋体操には、笑顔をつくる表情筋を強制的に動かすことで、自然に笑ったときと同じよ うに脳が楽しく感じる、というメカニズムが働いている可能性もあるという。

苧阪(おさか)直行・京都大名筈教授(実験心理学)によると、人が「おもしろい」と感じるとき、大脳内の線条体という領域などが活発に活動し、神経伝達物質のドーパミンが放出され、顔の笑いの筋肉も動く。反対に顔の筋肉を刺激すると逆のルートをたどって、脳内で楽しい気持ちが形成されるという。「自分で作り笑いをして鏡で見るだけでも楽しくなることが分かっています。『楽しいから笑う』の反対で、『笑うから楽しい』とも言えるのです」(佐藤建仁)

 [インフォメーション]

NPO法人「笑み筋体操ハッピーネット」のサイト(http://www.emikin.com/)では、体操の講習会やイベント情報などを掲載。苧阪直行さんの著書「笑い脳〜社会脳へのアプローチ」(岩波書店、税別1200円)では、心理学や脳科学の実験からわかってきた笑いのメカニズムや、笑いと健康の関係などについて紹介している。




(出典:朝日新聞、2014/11/22)

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