【不調を招く「歯の接触癖」にご注意 根を詰めず、口の脱力を】

上下の歯、無意識に接触させる癖ありませんか? 歯が長時間触れていると、顎の関節や歯に負担がかかり、かみ合わせの違和感や入れ歯の不調につながることがあるそうです。どうしたら防げるのでしょうか。

   □  □

東京医科歯科大学の木野孔司・准教授によると、通常は口を閉じていても、上下の歯は接触しておらず、わずかな隙間があるという。あごが痛い、開かないといった顎関節症の患者約500人を木野さんらが調べると、約8割に、歯を接触させている共通の癖が見つかった。

ぐっと歯を食いしばっても、あごなどに負担がかかるが、長くは続かない。一方、軽い接触は長時間化しやすく、問題はより深刻化しやすい。こうした癖を「TCH」 (T00th Contacting Habit)と名付けた。

TCHがあると、口の周囲の筋肉が緊張を続け、関節に力が加わり続ける。歯や歯肉にも影響が出る。通常は、疲れを感じた脳が「歯を離せ」と命令を出すのだが、TCHの人はこの命令を抑え込んでしまい、脳が命令を出さなくなってしまう。木野さんらの調査によると、片方の歯だけでかむ癖がある人がTCHになるリスクはそうでない人の2・8倍。精密作業に従事している人は2・2倍だった。

癖があるかどうかは、いすに腰掛け背筋を伸ばし、目と口を閉じた状態でチェックできる。上下の歯を離そうとして口が開くか、上下の歯を離した状態にして違和感があるかが主な方法だそうだ。

   □  □

不調を感じ、TCHの改善をはかるにはまず、歯の接触は体に良くないことと自覚しよう。「歯を離す」と気付かせてくれる文字や絵をかいた紙を10カ所以上にはることを木野さんは薦める。同じデザインのものをパソコンの周囲や車内など目につく場所にはろう。

紙を見たら力を抜く。これを繰り返すと次第に上下の歯を離すまでの時間が短くなり、触れると同時に離れるようになるそうだ。「コツをつかめば、約3カ月で条件反射が戻り、治る人が多い」と木野さんは話す。

みどり小児歯科(横浜市)院 深長の和気裕之・日本大学客貞教授は、かみ合わせの違和感や入れ歯の痛みが続く患者に、「口を強く結ばず、歯を離すように」と助言する。「こうした生活指導をすると、軽くなる患者さんがいる」と話す。不安やストレスが高まると、顔の周りの筋肉も緊張し、TCHにつながる。腹式呼吸やウオーキングで リラックスすると、さらに効果的だそうだ。

他にも原因不明の歯や舌の痛みも、TCHが原因の一つになるという。「痛みや違和感は、感じる場所に、原因があるとは限らない。2人以上の歯科医に診てもらっても異常がなく、症状が続くようならばTCHを疑い、歯を離すことを試みて。改善しなければ大学病院などに相談を」と話す。(辻外記子)

[インフォメーション]

木野孔司さん監修の「自分で治せるー・顎関節症」(講談社)は、TCHになる仕組みや改善法などを解説。次世代の顎関節症治療を考える会のサイト(http://tmd-kino.com)は、研究実績やTCHに詳しい歯科医院などを掲載する。行動療法の手法を採り入れた専門治療は、自費診療。4回程度の通院で合計6万円が相場という。




(出典:朝日新聞、2014/10/25)

戻る