【「だし」を利かせて健康的な食事に うまみの効果で満足感】

和食が昨年12月にユネスコの無形文化遺産に登録され、改めて「だし」の魅力が見直されています。だしを利かせることで健康的な食事にできると専門家は指摘しています。

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自宅で調理するときには、市販のだしパックや粉末だしに頼りがちで、本格的なだしのとり方を知らない。基本を教えてもらおうと、老舗昆布店「神宗」(かんそう)が運営するだし工房「宗達」(そうたつ)の小山鐘平社長(31)を訪ねた。

小山さんはまず、カップに入った2種類の薄茶色の液体を差し出した。片方を飲むと、みその昧がすることは分かった。もう片方を飲むと、みその昧がもっと口のなかに広がり、よりおいしい。前者はみそと水、後者はみそと合わせだしだった。

「なぜみそがおいしくなるのか。だしの『うまみ』のためです」と小山さんが種明かしをしてくれた。うまみの正体は、昆布に含まれるグルタミン酸、かつお節のイノシン酸、しいたけのグアニル酸などだ。グルタミン酸とイノシン酸、グルタミン酸とグアニル酸がそれぞれ合わさると相乗効果が生まれ、さらにうまみが増すという。

相乗効果が顕著に表れているのが「一番だし」だ。家庭で手軽に作れる方法も教えてくれた。ペットボトルに水1mと昆布を10c入れて一晩。昆布からとれただしだけを鍋に移し、沸かした後、火を止めて削り節20cを入れ、1分半待つ。シートでこすと出来上がり。最後にシートの削り節を搾らないのがポイントだ。煮立たせないことで、苦みや雑昧が混じらず、香りも消えないという。

出来上がっただし400∝に薄口しょうゆ20∝、みりん20∝を入れるとかけうどんのだし、だし100CCに濃い口しょうゆ20∝とみりん20CCを入れるとそうめんのつゆになる。小山さんは「基本を知っていればアレンジが効く。レトルト食品や総菜などで調理離れが進み、だしをこす手間は時代に逆行しているように見えますが、ひと手間でおいしんです」と話す。

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龍谷大の山崎英恵准教授(栄養化学)はうまみの効果として、満足感を挙げる。糖尿病になりやすい種類のマウスに脂肪分の高い餌とともに、水を与えるグループ、かつおだしと水を与えるグループに分けて実験したところ、後者の方が摂取カロリーが少なく、体重増加も緩やかだった。だしのおかげで満足感が得られ、カロリー摂取が抑 えられたとみられる。

だしのうまみは、塩味、甘み、酸味、苦みと並ぶ基本昧。それぞれの昧は舌の表面にある味蕾(みらい)という器官で受容され、脳に伝えられるという。

山崎さんは「相乗効果でうまみは6〜8倍に増えるとされ、海外でも中華だしやブイヨンなどで相乗効果が利用されている。和風調味料に少し『追いがつお』をするだけでも香りが増しておいしさが高まります」と話している。(合田禄)

[インフォメーション]

「神宗」の鎌倉店(0467・61・1055)では、昆布の種類による昧の違いや一番だしのとり方を教えてくれる「だし教室(基本編)」を月2〜3日開いている。試食付きで1人2千円。農林水産省のホームページで公開している「和食ガイドブック」や「日本食文化テキスト」では日本の食文化とだしの関わりについて解説している。




(出典:朝日新聞、2014/09/27)

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