【増え続ける潰瘍性大腸炎】

下痢と腹痛が続いていたKさん(52歳)。しばらくすると血便も出てきて、慌てて受診すると、潰瘍性大腸炎と診断された。国の特定疾患だと知り、不安になっている。

血便は、消化管に何らかの異常がある場合のサインであり、原因となる病気により、その様相は異なってくる。中高年の血便で多く見られるのは痔によるもので、その場合は鮮血が混じる便となる。潰瘍性大腸炎では、膿性の粘液が混ざった粘血便が特徴的だ。ただし、大腸ポリープや大腸ガン、アメーバ赤痢などでも血便が見られるので、いずれにせよ早めの受診が必須となる。

潰瘍性大腸炎は、ほかの細菌やウイルスによる大腸炎と異なり、原因が特定できていない。大腸の粘膜が炎症を起こして潰瘍やびらんができ、長く続く下痢、腹痛、頻便、粘血便などの症状が引き起こされる。病状が進むと、発熱、貧血、頻脈、体重減少などを伴う。合併症には、皮膚病変、眼病変、関節痛などが挙げられる。

かつての日本ではあまり見られない病気だったが、近年、患者数が増え続け、珍しい病気ではなくなった。難病として国の特定疾患に指定されているが、公費助成を受ける患者数は、3万人未満だった20年前から4倍以上増え、今では13万人を超えている。発症率に男女差はなく、いずれの年代でも発症し得るが、20代での発症が最も多く、最近では中高年世代での発症も目立ってきている。

再発予防に受診は継続
病気の原因は明確にされていないが、国内の患者数の増加を鑑みるに、食生活や衛生環境の変化により、無数に存在する腸内細菌からなる腸内環境が変わってきていることが、発症に関与しているのではと考えられている。ほかにも、遺伝学的因子の関与や、自 己免疫疾患が関わるとの説もあるが、発症のメカニズムなどは不明である。

診断は、症状の経過や病歴を尋ねる問診、血液検査を経て、内視鏡での検査、粘膜組織の一部を調べる生検などを行う。症状の重さによって軽症・中等症・重症に、炎症の起きている病変の位置によって直腸炎型・左側大腸炎型・全大腸炎型に分類され、それぞれの病状に適した治療法が検討される。

現在のところ、病気を完治させる治療法はなく、症状を抑える対症療法で、病気を寛解に導く治療を行う。基本的に薬物による内科的治療を主とし、内服薬のほか、肛門からの薬剤注腸、静脈からの点滴などで投薬する。また、血球成分除去療法で透析を行うケースもある。内科的治療で症状が改善しない場合や重症の場合、大腸の摘出といった外科的治療も考慮する。

潰瘍性大腸炎はいったん寛解しても、再発しやすい病気のため、定期的な受診と服薬は欠かせない。だが、正しい治療を続けていれば、特に食事制限もなく、健常時と同様の生活を送ることができる。ことさら不安がらず、主治医の指導の下、上手に病気とつき 合っていってもらいたい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/12/16号、金井 隆典=慶応義塾大学病院(東京都新宿区)消化器内科教授]

[イラスト:市原 すぐる]

戻る