【メンタル不調を見逃さない】

地元商社のA社長から、体調不良が疑われるBさんへの対応について相談された。Bさんは大卒の新人で、仕事に熱心な模範的社員だか、遅刻や居眠りが急に増え、顔つきも暗くなったという。最近、取引先から請求ミスで叱責されたことがあったらしい。社内では誰も問題にしていないが、どう声をかけたらよいかとのことだった。

上司たちの多くは、うつ病などの診断書を部下が提出してきた時点で慌てるケースが多い。部下たちも、メンタル不調になっても医療機関に行こうとせず、職場では表面的な元気を装うことが少なくない。それだけに、管理職は部下の状態に注意を向けると同時 に、メンタルヘルスの知識を持ち、適切な行動につなげていくことが期待される。そんな余裕はないと無視していれば、コンプライアンス(法令順守)違反ともなるので注意が必要だ。

では、どのような部下の異変に気をつけ、どう声をかけて対応したらよいのか、ポイントを説明したい。

「4つのA」に要注意
メンタル不調のサインは「4つのA」で出現する。1つ目は「アルコール(AIcohol)」である。飲食時に泣き出す、泥酔する、無口になる、二日酔いからの遅刻や体調不良での有給申請などが頻発したら要注意だ。不眠、疲労、うつなどをアルコールで紛らわすことが習慣になると依存症にもつながる。

2つ目は「アブセンティーイズム(Absenteeism)」。これは遅刻、早退、体調不良による欠勤、会議の突然の欠席、営業アポイントメントの敬遠、ボーッとしている状態も含まれる。

3つ目は「アクシデント(Accident)」で、職場でのミス、けが、納期延滞などが該当する。社員のうつを放置して大事故につながったケースもある。

4つ目は「アノイアンス(Annoyance)」だ。職場でのイラつき、焦燥感、泣き言、けんか、苦情、ハラスメントなどが該当する。

上司は部下の身だしなみ、顔つき、挨拶の声、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」の頻度とメリハリ、能率低下による残業増加などにも注意を向けたい。異変は放置せず、早期にかつ継続して部下を呼び出し、表の2で挙げたポイントを引き出していく。

上司が「元気を出せ」「頑張れ」と言い過ぎると、うつ状態ではそれがプレッシャーとなってさらに落ち込むこともある。過敏になりすぎて「君はうつではないか?」と言えば、会話がストップしてしまう。だが、部下の不調が2週間以上も続いている様子なら、上司は人事、産業医、保健師、契約カウンセラーにその様子を伝えて相談することだ。社内に窓口がなければ、地元の公的機関の窓口や心療内科などへ上司が出向きアドバイスを求める。そして部下にも、専門家に体調の相談をするように粘り強く勧めてはしい。

幸いBさんのケースでは、上司がアドバイス通りに対応したところ、仕事での不安と睡眠不調が判明した。今は心療内科に通院して元気を取り戻し、経過を見守っているとのことだ。

[出典:日経ビジネス、2013/2/09号、渡部 卓=ライフバランスマネジメント研究所代表] 戻る