【前立腺肥大症の治療法】

最近、Yさん(58歳)はトイレが近くなったと感じている。夜中もトイレで目を覚ますことが度々あり、前立腺肥大症ではないかと疑っている。

前立腺は男性特有の生殖器で、膀胱の下にあり、尿道を囲んでいる。50歳過ぎから肥大し尿道を圧迫するため、尿が出にくくなる。60歳以上の50%以上に前立腺肥大症が認められる。

初期には、日中や夜間の排尿回数が増える。肥大が進むと、尿が出にくい、尿の勢いがなくなる、残尿感があるなどの症状が出てくる。悪化すると、尿が全く出ない尿閉という状態になる。

症状の判定に使われる国際前立腺症状スコア(IPSS)では、排尿の回数や間隔、尿勢、残尿感、我慢ができるかなどを点数で評価する。ネットでも検索でき、自己診断も可能だ。

前立腺肥大症は自然に治癒することはない。排尿状態の悪化の裏に脳・脊髄など神経の病気や前立腺ガンが隠れていることもあり、排尿状態に異常がある場合は、専門医を受診してほしい。

多種の薬や手術が選択肢に
前立腺肥大症でも症状が軽く日常生活に不便を感じなければ、経過観察のみで治療の必要はない。アルコール・カフェイン・刺激の強い食品などの制限、便秘の解消、適度な運動、下腹部の保温などで改善も期待できる。

症状が進み、日常生活に支障が出れば、薬や手術での治療が必要になる。薬では根治できないが、症状は軽減できる。最もよく使われる薬はα1遮断薬だ。膀胱や前立腺の平滑筋を弛緩させて、尿を出やすくする作用がある。

抗男性ホルモン薬は、男性ホルモンの作用を抑え、前立腺を小さくする。ただ、勃起障害や肝機能障害などの副作用を伴う場合がある。副作用が少なく、男性型脱毛症でも用いられる5α還元酵素阻害薬も有効である。しかし、前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSAが減少するため、専門医の管理下で服用することが好ましい。

膀胱過敏(過活動)が原因で頻尿になる場合は、抗コリン薬が有効だ。膀胱の緊張を和らげ、頻尿を抑える。だが逆に尿が出にくくなる場合があり、α1遮断薬と併用することもある。

薬物治療を3〜6カ月続けても症状が改善しなければ、手術も選択肢に入る。特に残尿量が100ミリリットル以上で減らない場合は、手術を考慮する基準にもなる。様々な手術法があるが、最も標準的なのは経尿道的前立腺切除術(TURP)だ。尿道から内視鏡を入れ、電気メスで前立腺を切除して尿道の閉塞を解除する。前立腺核出術(HoLEP)と前立腺レーザー蒸散術(PW)では、様々なレーザーを駆使して前立腺を切開し核出する。蒸散術は出血のリスクを最小限に抑えることが可能だ。電気メスによる経尿道的前立腺核出術(TUEB)も増えている。

効果の高い薬剤や安全な手術が開発されたことから、前立腺肥大症の治療の選択肢は以前より増えている。排尿で気になることがあれば、気軽に泌尿器科を受診してもらいたい。
(談話まとめ:繁宮 聴=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/12/01号、西松 寛明[東京大学大学院医学系研究科(東京都文京区)泌尿器外科学准教授]

[イラスト:市原 すぐる]

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