【背の筋肉のゆがみ 大相撲八角部屋直伝の腰痛撃退】

大相撲の元横綱北勝海の八角部屋には、独自の腰痛体操があります。その効果は、他の部屋の力士たちが教えを請いに来るほどです。現役時代、腰痛に苦しみ続けた八角親方が編み出した腰痛撃退法を紹介します。

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千代の富士が破竹の連勝を重ねていた1988年。弟弟子で共に綱を張る北勝海は腰痛に苦 しんでいた。「医者に行きたくても車にも乗れない状態。寝ていることすら苦痛だった」。あらゆる治療法を試みたが、回復の気配がまるでない。最後にすがったのが、大分で独白のトレーニング理論を実践していた豊東浩二(56)さんだった。

当時、腰痛は安静にして痛みが治まるのを待つのが一般的だった。だが、これでは筋力が落ちてしまう。豊東さんは、筋肉のゆがみが腰痛の原因になっているケースが多い点に着目。まずは筋肉のバランスを整え、併せて、痛みを我慢して筋肉を鍛え続ける対処法を考案した。

豊東さんによると、腰痛の原因の一つに、「脊柱起立筋」(棘筋、最長筋、腸助筋)のゆがみが挙げられるという。背骨を包み込むように人体の中心を貫く筋肉だ。この筋肉の左石のバランスが崩れると、そのゆがみを補うために別の筋肉が酷使され、やがて腰痛を引き起こしてしまうケースが多いという。

脊柱起立筋のバランスを整える体操は、まず何かにつかまって体重を支え、腰を前に突きだしていく。そして、ゆっくりと「l、2、3、4」と数え、今度は逆に尻を後ろに突き出し、再びゆっくりと数を数える。腰と尻を突き出す運動を繰り返すだけだ。子供用の鉄棒につかまるのが最適だが、自宅の階段や台所の流し台などでも十分だ。

豊東さんによると、のけぞることで脊柱起立筋の左石のバランスが整えられ、前かがみになることで筋肉全体がストレッチされる。これで、脊柱起立筋のゆがみが原因となっている腰痛の多くは平癒するという。

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北勝海は準備運動代わりに毎日300回線り返し、そこからリハビリに取り組んだ。88年11月の九州場所千秋楽。千代の富士は結びの横綱対決で大乃国に敗れ、史上2位の連勝記録(当時)が53で止まった。これが「昭和最後の相撲」だった。3場所連続で全休中の北勝海は、大分のリハビリ先のテレビで、その光景を見つめていた。翌89年初場所。「平成」最初の本場所で、4場所ぶりに出場した北勝海は涙の復活優勝を遂げた。

この体操を八角部屋では「腰入れ」と呼び、毎朝の稽古後の整理運動に採り入れる。その効果は相撲界で広く知られ、教えを請う他の部屋の力士も多い。

長年腰痛に悩まされてきた私も、教えてもらって実行したところ、1カ月もたたずに痛みから解放された。八角部屋のトレーナーを務める豊東さんは「1セット10回を毎日5セット続ければ、効果が表れるはず」と語る。(抜井規泰)

[インフォメーション]
ぐーつと腰を突き出すと、骨盤の中が動くような「効いている感覚」がある。長年腰痛に苦しんだ私は、凝り固まった腰椎を緩ませる感覚で取り組んだ。尻を突き出すとき、太ももの裏側を伸ばすようにすると、より効果があるようだ。ただ、この体操は横綱のリハビリ用に考案されました。特に年配の方は医師に相談して行ってください。

(出典:朝日新聞 元気のひけつ欄、2013/11/30)

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