【受診しづらい肛門の痒み】

肛門が痒くて、ついお尻に手がいってしまうKさん(31歳)。恥ずかしい部位なので誰にも相談できず、受診もできないでいるが、痒みが増して仕事に集中できない。

肛門周辺の皮膚が痒くなる病気の総称を、肛門掻痒(そうよう)症と言う。肛門を診察すると、皮膚が赤くただれる、カサカサする、ジュクジュクする、湿疹があるなど、様々な症状が見られる。ひどくなると、イライラしたり、不眠や神経不安になったりする人もいるので、「単なる痒み」と、軽く見てはいけない。

痔みの原因として特徴的なのは、排便後の過剰な肛門の拭きすぎが一番多いことだ。「痒いのは、肛門に便が残って不潔にしているから」と思い込み、必要以上にゴシゴシこすって拭いてしまう。そういう人に限って、風呂でも石鹸をつけてゴシゴシ洗っている。肛門周辺の皮膚は非常に薄くてデリケートなので、1日に何度も繰り返しこすれば、皮膚が荒れて乾燥し、痒みが増す。すると「もっと清潔にしなければ」と、さらにゴシゴシ洗って患部を悪化させるという悪循環に陥るのだ。

清潔にこだわる若い世代に多い
患者は20〜40代が多く、清潔志向が強い世代と言える。特に男性は、飲酒や過食などから下痢になる人が多く、必然的に排便回数も増えるので、女性より男性に患名が多い。デスクワークの人はイスに座っている時間が長いので、肛門がムレて、痒みを誘発しやすい。こまめに立ちあがって下半身の風通しをよくするなど、配慮が必要だ。また、飲酒後や就寝時など、休が温まると痒みが増す傾向があるので、掻かないように気をつけたい。

排便後は通常、温水洗浄便座を活用して、トイレットペーパーで1〜2回水分を拭き取るくらいの手間できれいになる。拭きすぎの患者は、肛門が痛くなるほど、あるいは、血が出るほど拭いている。基本的な対応は、とにかくこすらないこと。温水洗浄便座で洗い、トイレットペーパーを軽く押し当て水分を取る程度にして、優しく拭く。溢水洗浄便座が設置されていなければ、携帯用のお尻洗浄器を持ち歩くと便利だ。

ただし、肛門の痒みの原因は、いぼ痔や切れ痔などの肛門疾患のほか、尖圭コンジローマ、クラミジア、ぎょう虫などの感染症がいろいろある。特に感染症の場合は、家族に感染させる可能性もあるので、早期に治したいものだ。痔みが何日も持続する場合は肛門科に、近所になければ皮膚科を受診して、正しい診断を受けてはしい。

痔みには、ステロイド軟膏と痒み止めの内服薬で治療するが、肛門の拭きすぎが原因なら、2週間ほどで治る。痔や感染症などが原因なら、それに対する治療をしなければならない。

肛門は恥ずかしい部位だけに、受診せずに、市販の痔の薬に頼る人も多いが、薬が合わなくて悪化させてしまうことも珍しくない。適切に治療すれば、簡単に治るケースがばとんどなので、病院に行くのを躊躇しないことが、一番大事なことだと言える。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/11/04号、山腰 英紀=港北肛門クリニック(横浜市都築区)院長]

[イラスト:市原 すぐる]

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