【痛風に症状が似る偽痛風】

膝の関節が急激に腫れて痛み、眠れなかつたHさん(62歳)。痛風を疑って受診すると、偽痛風と診断された。飲食の制限はされず安心もたが、再発を気にしている。

痛風は、血中の尿酸値が高まり、関節内に尿酸の結晶が析出することで炎症が起きる。一方、偽痛風では、関節内にピロリン酸カルシウムの結晶が析出して炎症が起きる。突然、膝、手首、足首、股などの関節が腫れ、激しい痛みを生じる。痛風の好発部位は足の親指の付け根だが、急激な経過がそっくりなので、偽痛風という病名で呼ばれている。痛みを意識してから24時間以内に炎症が進み、最も腫れ上がってから痛みが2〜3日続く。しかし、ピークを過ぎると、自然に治まっていく。

偽痛風は、関節内の関節液を採取し、ピロリン酸カルシウムの結晶の有無を調べることで容易に診断がつく。根本的治療法はなく、対症療法となるが、関節液内に遊離している結晶や炎症物質が減れば炎症が治まるので、検査の際に関節液を抜く処置をする。痛みを取り除くには、非ステロイド系の消炎鎮痛剤の経口投与が一般的だ。関節の腫れや痛みだけでなく、発熱など全身症状がある場合は、一時的にステロイド剤の経臼投与や点滴を行う。

加齢とともに発症率が上昇
偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶が関節の軟骨組織に沈着し、それが関節液内に遊離するために炎症反応が起きる。だが、なぜ結晶ができるかば明確には分かっていない。しかし、多くの患者さんの初発年齢から、軟骨組織の加齢による影響とも考えられている。カルシウムの代謝が悪い先天的疾患のある人や、血中のマグネシウムやリンの濃度が低い人、甲状腺機能低下症などでホルモンバランスが悪い人などでは、稀に若年でも発症することはあるものの、ほとんどの患者さんは60歳以上だ。痛風では男性の発症率が高いが、偽痛風には発症率に男女差は見られない。発症は、過度の運動による肉体的ストレスや、病気で手術を受けたり、けがをしたりなど体に負担がかかった時に多く見られる。

痛風は尿酸値を下げる薬を服用することで予防ができるが、偽痛風の場合は血中のカルシウム濃度が高い人が発症するわけではないため、予防が難しい。ただし、何度も発作を繰り返す人には、予防薬としてコルヒチンという痛風の薬を使うことがある。ほかの病気などに起因して発症しがちなため、普段から健康を心がけるのが、この病気の予防につながるだろう。

急に関節が炎症を起こした際に、最も注意が必要となる病気に、感染性関節炎がある。手術やけがなど、何らかの原因でバイ菌が関節内に入って炎症が起きるこの病気は、バイ菌が全身に広がる可能性も高く、敗血症につながる恐れもある。最終的には命に関わるため、痛風にせよ偽痛風にせよ、この病気との鑑別が重要となる。安易に素人判断せずに、整形外科か膠原病やリウマチの専門医の下、早めに検査を受けるのが望ましい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[ [出典:日経ビジネス、2013/10/21号、桑名 正隆=慶応義塾大学病院(東京都新宿区)リウマチ内科准教授]

[イラスト:市原 すくる]

戻る