【風疹の流行、予防と対策】

微熱が続いたHさん(35歳)は、軽い発疹があるのに気づいて受診すると、風疹と診断された。無理して出勤していたので、同僚が感染していないか心配している。

風疹の流行はピークを越えているが、終息する気配は見られない。2011年頃から患者数が増え、2012年は過去で最も多い2392例の報告があった。今年の7月14日までに診断された患者の累計数は1万2832人と、既に5倍以上に増えている。

風疹は、風疹ウイルスに感染することで発症する病気で、咳や会話などの飛沫に含まれるウイルスを吸い込むことで感染する。感染から症状が表れるまでに2〜3週間かかるうえ、発症する1週間ほど前から周りの人にうつしてしまう。また、感染しても症状が出ない不顕性感染症が15〜30%もいる。

患者の9割は大人が占めており、男性が女性の3.3倍となっている。男性患者の8剖が20〜40代。その理由は予防接種の制度に起因している。

2013年7月1日現在、25歳9カ月(1987年10月1日生まれ)〜34歳3カ月(79年4月2日生まれ)の男女は、中学校での集団接種から医療機関での個別接種に切り替わり、接種率が急激に下がった年代だ。さらに、34歳3カ月(79年4月1日生まれ)以上50歳未満の男性に至っては、風疹の予防接種が義務づけられていなかったことに加えて、かかっていない人も多いため、20〜30%の人が抗体を持たない。51歳3カ月(62年4月1日生まれ)以上の人も接種していないが、子供の頃にかかって9割程度の人が免疫を持っている。

風疹の主な症状は、発熱、発疹、リンパ節の腫れで、これといった特効薬はなく、症状を和らげる対症療法しか手立てはない。受診して診断を受け、ゆっくり自宅で休養すれば、基本的には予後は良好な病気だ。しかし、40度以上の熱が続いたり、脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症になったりして入院が必要な場合もあり、症状の出方は様々。手指のこわばりや痛みを訴えることも多く、関節炎を伴うこともあるが、そのはとんどは一過性だ。

妊婦が感染すると胎児に影響が
風疹と診断されたら、速やかに職場に連絡して、接触のあった人にワクチン接種歴や躍患歴を調べてもらうなど、注意を促すことも必要。特に妊娠20週までに妊婦が感染すると、胎児に白内障や緑内障、心疾患、難聴などの障がい(先天性風疹症候群)が起こる可能性がある。妻だけでなく、職場の同僚など、妊娠中の女性の誰に感染するか分からない。親しい人に配慮するためにも、予防接種を受けてほしい。

幼い頃に「風疹にかかった」と思っていても、ほかの病気と勘違いしていたり、子供の頃に風疹の予防接種を受けたつもりで、別のワクチンを接種していたりすることも珍しくない。

抗体の有無は、血液検査ですぐに分かる。抗体がなければ、近くの病院で予防接種の予約をしよう。6000円から1万円前後かかるが、費用を助成する自治体や企業も増えてきている。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/08/26号、多屋 馨子=国立感染症研究所(東京都新宿区)感染症疫学センター室長]

[イラスト:市原すぐる]

戻る