【多様化するセクハラ問題】

社長の言動について、社外取締役から相談を受けた。「業務経験が不足しているから」と、女性に偏って頻繁に報告や面談を求めるそうだ。慰労会と称して飲食やカラオケにも誘い、酔うと冗談ながらきわどい言動もあるらしい。社長は気にする様子もなく、どう進言すべきかと言う。 働く女性からの相談では、「嫌がらせ、セクハラ」「女性・母性保護」関連が上位を占める。大学で教えていると、ハラスメントに対する学生の目は厳しく、インターン先の問題ケースを聞くことも珍しくない。 部下や取引先を個人的に誘おうとして断られてから、態度や評価を変えることを「対価型セクハラ」と分類する。 年齢や外見などについで性的なことを絡めて話したり、女性によるお茶出しや酒席でのお酌を暗黙のア解にしたり、商談や出張、業務の割り振りなどで性差による感情を無視するようなことば「環境型セクハラ」に該当する。「産休・育休復帰後から周囲の態度が変わった」「配慮のない労働環境下で流産した」などのケースは「マタニティーハラスメント」とも呼ばれる。 大手企業では啓発が進み減少傾向にあるが、ベンチャー企業のトップや中小企業の管理職が問題視されるケースは潜在的に多い。酒席のマナーに無頓着な若手社員が羽目を外してセクハラ問題となる場合もあるので、全社員に注意が必要だ。女性から男性、同性同士、性同一性障がい者や外国人、アルバイトやインターンの学生が対象になることもある。例えば、女性上司が男性社員の頭髪、体形、性格について辛辣に言及したり、宴席で一気飲みを強要したりすることもハラスメントに当たる。女性同士でもお互いの服装や化粧、お茶出しなどで女性らしさや役割意識を強要されることがある。 対応に問題がある場合も
発生場所も職場内だけでなく、収引先、委託先、派遣先、自宅、出張先、飲食店、交通機関、海外へも広がりつつある。SNS(交流サイト)での上司の言動がハラスメントとして問題となった り、女性上司が業務メールで絵文字を多用して問題になったりしたこともあった。 貝体的な対策としては、トップがハラスメントを許さない方針を宣言することが重要だ。その一環として、上下関係にかかわらず、「さん」づけで呼び合うことをルール化した企業も多い。今回のケースでは、欧米のように社長にエグゼクティブコーチをつけることを社外取締役と株主が検討した。 対策を取っている企業でも、ハラスメント相談窓口で相談者に非があるような対応をしたり、情報が管理されず噂が広まり、うつ病休職や退職者を出し、問題が拡大したりすることもある。古くからあるセクハラ問題は軽視されがちだが、時代の変化とともに多様化していることに注意が必要だ。

[出典:日経ビジネス、2013/08/12号、渡部 卓=ライフバランスマネジメント研究所代表]

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