【広範囲に広がる円形脱毛症】

10円玉くらいの円形脱毛ができたNさん(47歳)。いつの間にか数が増え、広範囲にわたって脱毛するようになった。進行を止めるにはどうしたらいいのだろう。

円形脱毛症は、血液中のリンパ球が、毛根部分の自己抗原を誤って攻撃することで髪が抜け落ちる自己免疫疾患である。精神的ストレスや高熱、ダイエットなどでも、一時的に脱毛を来すことがあるが、原因がなくなれば、毛髪は自然に生えてくる。これらは、自己免疫疾患とは関係のない脱毛である。

円形脱毛症の多くは、直径1〜2cm程度の脱毛部分が2〜3個できている症状であり、7割方は自然治癒すると言われている。しかし、脱毛部位の直径が3cm以ヒの単発型や、脱毛部位が次々に増えていったり、ほかの脱毛部位とつながったりして、脱毛面積が広がっていく多発型は、すぐには治りにくい。さらに、多発型の脱毛部位が頭部全体に広がり、最終的に頭髪すべてが抜けると全頭型に、頭髪だけでなく体の毛も抜け落ちると汎発型となり、いずれも治療は長期にわたる。

症状に合わせて対症療法を
円形脱毛症かどうかは、脱毛部分の皮膚や抜けた毛根の観察、血液検査、髪を引っ張るテストなどで診断がつく。円形脱毛症だと、抜けた毛髪の根元が黒く、先細りになっている。髪をつかんで引っ張ると、いとも簡単に抜け落ち、また、根元に近い所で切れてしまっていることもある。

円形脱毛症と診断がつけば、その症状の程度や進行具合に合わせて治療を行う。ただし、円形脱毛症の根本的治療は確立されておらず、あくまでも対症療法となる。

治療は、脱毛面積が頭部全体の25%未満と25%以上とに分けて、治療方針を決めることが多い。

比較的軽

症となる25%未満であれば、外用薬やステロイド剤以外の内服薬を投与して様子を見つつ、発毛の兆候がなければ脱毛している部分にステロイド薬の注射を打つ。効果の高い治療法ではあるが、脱毛範囲が狭い場合でないとなかなか難しい。

急速に進行した多発型の場合は、比較的治りも早い傾向にあるが、頭髪全体の25%以上が脱毛している場合、基本的には難治性となることが多い。一度治っても再発しやすく、発症を繰り返すほど治りにくくなっていく。治療では、急性期のステロイドの内服や外用薬のほか、局所免疫療法という保険適用外の治療を行う。

局所免疫療法では、脱毛部位に化学物質で接触皮膚炎を起こし、毛根を攻撃するリンパ球の免疫反応を変化させる。2週間ごとに化学物質を塗布するが、副作用も少なく、高い効果が期待できる。現在のところ、限られた医療機関でしか行っていないので、通える範囲の専門外来を探すといいだろう。

生活上の注意点は、体を疲れさせないことが重要だ。喫煙している場合は禁煙をし、睡眠を十分に取り、規則正しい生活とバランスのよい食事を心がけるのが望ましい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/08/05号、坪井 良治=東京医科大学病院(東京都新宿区)皮膚科教授]

[イラスト:市原すぐる]

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