【気づきにくい「かくれ脱水」】

最近、食欲が落ちて体がだるく、仕事中に集中力も途切れがちなAさん(43歳)。夏パテだろうと思っていたが、一向によくならない。

「かくれ脱水」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。脱水症の一歩手前で、症状が明らかには表れていない状態をそう呼ぶ。医療の現場では以前から注意が払われていたが、最近は熱中症患者の増加などから、一般にも知られるようになってきている。

体液が不足して不調を来す脱水症は、炎天下の日中だけでなく、夜間にも起こる。就寝中に呼吸や発汗によって失われる水分量は意外に多く、ペットボトル1本分(250〜500ミリリットル)に及ぶこともある。そのため、気づかぬうちにかくれ脱水になりやすく、それが要因となって、睡眠中に脳梗塞を発症する人も増えている。

かくれ脱水になる原因は、単なる水分不足だけではない。水分とともに、塩分(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど電解質)も失われる。そのバランスによって、脱水の種類も異なってくる。

高張性脱水は、体内の水分が失われ、塩分が多く残っている状態。血液中の塩分濃度が高くなるので、のどが渇いて本能的に症状に気づける。

等張性脱水は、胃腸炎や下痢、嘔吐などで、体内の水分も塩分も一気に失われてしまう状態。ぐったりして元気がなく、意識もぼんやりとしてくる。

低張性脱水は、体内の塩分が失われた時や、もともと体質的に塩分の濃度が低かったり、加齢によってホルモンに変化が生じたりした場合にも起こる。自分ではのどの渇きに気づきにくい。高齢者が自宅で発症するかくれ脱水に多いのはこのパターンだ。

かくれ脱水は、春先から初夏、秋から冬にかけて発症しやすくなる。食欲不振や胃の不調、頭痛、集中力の低下、体のだるさなどを、夏パテや年のせいなどと一括りにして放置していると、思わぬ重症化を招くこともあるので注意したい。

就寝前には1杯の水分補給を
人体の約60%が水分で、その1〜2%が減少するとかくれ脱水になるが、この時点では症状が見えにくい。3%を超えて減少すると症状が明らかになり、5〜10%以上脱水すると熱中症となる。

日本人は、水分をしっかり摂取する習慣が少ない。就寝前には、1杯の水や白湯を飲むだけで、かくれ脱水の発症頻度が下げられる。飲酒した夜は特に、水分摂取を心がけてほしい。

エアコンの利いた室内でのデスクワーク中や、営業に出た車の中なども油断できない。デスクや運転席の傍らには、常に水分補給ができるように準備しておきたい。

なお、スポーツドリンクはやや糖分が多いものの、塩分が効率よく取れる。最近は、塩分と糖分の配合バランスを考慮した経口補水液(OS−1)も市販されているので、用意しておくのもいい だろう。
(談話まとめ:杉元 順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/07/22号、宮田 大揮=新百合ケ丘絡合病院(川崎市麻生区)救急科部長]

[イラスト:市原すぐる]

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