【「パワハラ」にならない叱り方】

販売会社を経営するHさん(52歳)から、「パワハラについて相談したい」と連絡があつた。営業所長に抜擢したばかりのEさん(42歳)がパワハラだと匿名の手紙が来たという。Eさんは目標未達の部下たちを、人目をはばからずに大声でこき下ろすらしい。

「パワーハラスメント」に関する相談が増えている。全国の労働局に寄せられた相談のうち、2012年度は「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」が5万件となり、2011年度までトップだった「解雇」を抜いて最多となった。

地位や立場、職権などを背景に、適正範囲や常識を超え、私情も絡めて部下や同僚、取引先に苦痛を与え、人間関係や職場環境を悪化させることはパワハラに該当する。メンタルヘルス(心の健康)不調の社員へのカウンセリングから、上司のパワハラが判明することも珍しくない。

予防対策としては、トップ自らが社内外に向けて、「パワハラを許さない」と公言することが重要である。ハラスメントへの社内アンケートを取って、その結果を公開し、関連の研修会や相談窓口を設けていくことも必要だ。

パワハラ上司は一匹狼で自信家が多く、他人への共感センサーが欠落したコミュニケーションをしがちだ。しかし、ストレスの時代では、誰もがパワハラと誤解されるリスクもある。

話す時の主語は「私」に
部下の叱り方のコツとして、私は管理職セミナーなどで「かりてきたネコ」の原則を紹介している(図表参照)。

「感情的にならない(か)」のは、自分の怒りを客観視して、そのエネルギーを語調や表情の活用に向け、上司が望む結果を導くためだ。上司が気持ちを押し殺すという意味ではない。

また、「理由(り)」を「手短に(て)」話すのは、相手本人の頭で理解させ、責任の追及が目的ではないと理解させることがポイントだ。

人格や性格をこき下ろし、ほかの社員と比較するのは最低の叱り方と言える。「キャラクターに触れない(き)」「他人と比較しない(た)」を念頭に置いておきたい。

やむを得ず叱った後は「私も熱くなって悪かった」などと声をかけて、「根に持たない(ネ)」ようにする。そして、個室で「個別に叱る(コ)」のが原則だ。

叱る際は傾聴を心がけて、背広を脱ぐなど無用な威圧感を与えない工夫もしたい。叱るタイミングにも注意が必要である。午前中に怒り心頭の部下の失敗も、午後には許せてしまうことがある。

話す時の主語は「私」にして、「私はあなたのミスが残念だ」などと表現すれば反発を招きにくい。「あなたが不注意だから」など2人称から始まると、本人は余計に責められる印象を持つ。

パワハラ問題を起こす人たちは、リラクセーションが苦手の傾向がある。夏休みにはゆっくりと心身の養生を心がけるようにしたい。

[出典:日経ビジネス、2013/07/15号、渡部 卓=ライフバランスマネジメント研究所代表]

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