【中小企業で実施したい対策】

200人の社員を抱えるAさんは、地元経営者クラブの食事会で「メンタル不調の社員が休職して あわててしiった」との話を聞いた。はどなく自社の総務部長から、うつ病での休職者が創業以来初めて出たと報告を受け、何をどうしたらいいのかと相談された。

中小企業の経営者向けセミナーなどで、メンタルヘルス(心の健康)がテーマになることが増えている。職場でのメンタルヘルスやハラスメントの問題が報道されている影響もあるのだろう。

中小企業の経営者は、この種の問題にもトップの判断や指示が期待される。だが、とっつきにくいテーマでもあり、手つかずになっているケースは多い。一方で、そのリスクや影響が気になり、対策を始めたいというAさんのような経営者も増えている。

欧米、・最近では中国でも、ヘルシーカンパニーを目指す動きは高まり、業績や株価維持などと並んで重視される傾向にある。日本ではその動きがまだ鈍く、経営者や幹部たちも健康をテーマとした問題には関心が低い。自身の健康に対してもコントロールができていない面も見受けられる。

不眠や慢性疲労に陥る、気分が落ち込む、周りに怒りをぶつけるといった不調のサインが経営陣に見られても、部下たちは指摘できない。海外駐在や単身赴任中の幹部たちも死角になりやすい。欧米では、幹部たちには業績向上の目的だけでなく、心身の不調予防でもコーチをつけるが、日本ではコーチング自体の普及が遅れている。

簡易チェックを実施・分析
メンタルヘルス対策は、経営戦略の中でも見落とされがちだ。しかし、行動規範、ハラスメント、リスクマネジメント、ワークライフバランス対策なども含めて、ヘルシーカンパニー創造への共通の土台となる。では、具体的な方策として、トップダウンで何ができるか。

まずは社員個人と組織のストレスチェックを実行してみてはどうか。簡易なチェックを全社員に実施して、そのデータを組織分析して部門の長も巻き込み議論する。さらに、社員の了解を得て、データを産業医や専門家が分析しながら、個別で問題のある社員には早期にカウンセリングやコーチング、医療機関で対応していく。

メンタルヘルス研修は大企業では一般化したが、中小企業でも実施が必要だ。社内コミュニケーションや傾聴、ハラスメント、ワークライフバランスなども同時にカバーできる内容にし、新入社員や非正規雇用社員、海外勤務候補者などにも広げたい。

大ストレス時代では、ヘルシーカンパニーを目指していくリーダーシップが人材と組織強化へのイノベーションにつながる。こうした領域は今後、経営学部やビジネススクールでの科目などにも取り込まれていくことだろう。

(出典:日経ビジネス、2013/06/17号、渡部 卓=ライフバランスマネジメント研究所代表)

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