【下肢静脈瘤にレーザー治療】

ふくらはぎに下腹静脈瘤があり、手術を勧められていたTさん(54歳)。多忙を理由に放置していたが、日帰りでできる血管内レーザー治療があると耳にした。

下肢静脈瘤とは、脚の静脈に血液がたまり、血管が膨らみ瘤になる、浮き出て蛇行するなどの症状が表れる疾患だ。脚がむくむ、頻繁につる、重く感じるなどの症状のほか、皮膚がかぶれやすくなり、黒ずんで硬くなったり、ひどくなると潰瘍ができたりもする。

脚の静脈の血液は、心臓へ向かって流れている。下から上へと流れる血液が逆流しないように、静脈の血管内には無数の弁がある。この弁の働きが悪くなると、血液は下へ下へと流れ、血管の1カ所にたまって瘤になったり、血管が膨張して皮膚に浮き出たり、血液の液体成分が血管外に染み出て、むくみの原因となったりする。乳酸がたまり酸素が減った血液が停留するせいで、皮膚に炎症も起きやすくなる。

下肢静脈瘤は女性に多い病気だと思われがちだが、患者さんの割合は男女1対2ぐらいで、男性に縁遠いわけではない。病気のリスクファクターに妊娠・出産があるため、確かに女性の方が発症率は高くなるが、それ以外のリスクファクターには性別の差はない。立ち仕事に従事している人、高血圧、糖尿病、脂質異常症など動脈硬化を起こしやすい人は、発症の危険性が高くなる。年を取れば血管がもろくなって弁が壊れやすくなるため、加齢と比例して発症率は上がる。親も発症していたという患者さんも多いので、遺伝的体質にも大きく関係しているようだ。

下肢静脈瘤かどうかは、見た目で診断しやすいが、どういった治療が適切かを調べるには、検査が必要となる。病院によっては、レントゲンや造影剤を使用してのCT(コンピューター断層撮影装置)検査などを行う場合もあるが、下肢静脈瘤の治療を専門とする医療機関であれば、検査は1時間もかからないのが一般的だ。超音波検査で診断をつけ、症状に合わせて治療法を考慮する。

レーザー治療が保険適用に
治療法としては、医療用の弾性ストッキングを履いて下肢に圧力をかけ、症状が進行しないように対策を取ることが1つ。さらに、患部の血管に硬化剤を注入して血管を固める硬化療法があるが、これは症状の軽いケース向きである。また、従来、多くの医療機関で行われてきた治療法として、原因となる血管を取り除くストリッビング手術がある。手術では皮膚を切開するため、4〜5日程度の入院が必要となる。

2011年から保険適用となった血管内レーザー治療は、皮膚から針を刺して静脈にカテーテルを通し、原因となる血管にレーザーを照射して閉塞させる治療法である。日帰りでの治療が可能で、痛みや内出血も少なく、当日から日常生活が営める。それでいて、手術とほとんど同様の効果が得られる。現時点では、治療を行える医療機関が限られるが、今後は、この疾患の主流の治療法となっていくだろう。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/06/10号、保坂 純郎=四谷・血管クリニック(東京都新宿区)院長]

[イラスト:市原すぐる]

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