【姿勢を正す習慣を】

オフィスで1日中、パソコンに向かってデスクワークをしているBさん(41歳)。腰痛や肩こりに悩まされているが、予防や対策にできることlまないだろうか。

人は高齢になると、姿勢が体の不調や病気と結びつきやすくなる。姿勢が日々の健康に影響すると言える。

姿勢には脊柱(背骨)の果たす役割が大きい。人間の脊柱は26個の椎骨が積み木のように重なり、1本の柱になっている。上から頚椎、胸椎、腰椎があり、その下に仙骨、尾骨がある。

脊柱は正面から見ると真っすぐだが、横から見ると頚椎は前弯(前方への湾曲)、胸椎は後湾(後方への湾曲)腰椎は前弯と、緩やかなS字状にカーブしている。このカーブが立位姿勢の安定性を保つ役割を果たしている。脊柱湾曲のバランスが崩れると、腰痛や背痛だけでなく、股関節や膝関節にも影響する。

加齢による変化として、胸椎後弯の増強と腰椎前弯の減少が起こり、立位バランスが悪くなる傾向がある。中高年以後の女性では、腹筋と背筋のバランスが崩れることで、腰椎前弯が後背になることもある。

また、近年では大人も子供も、パソコンやテレビゲームなどで前かがみの姿勢を取ることが多くなっているが、運動不足に加えて、そうした生活習慣を積み重ねると、腰痛や肩こり、頚痛といった非特異的疼痛(原因が特定できない痛み)の原因となる。

筋力と可動性を維持
姿勢には静的姿勢と動的姿勢(動作時姿勢)があり、正しい静的姿勢は、礼法で言うところの「よい姿勢」と考えればいいだろう。正しい動的姿勢はエネルギー消費が最小の姿勢である。

そうした正しい姿勢を取るには、体幹の筋肉(体幹支持筋群)を鍛えるアイソメトリックエクササイズが有効だ。アイソメトリックエクササイズは、筋肉を収縮させずに行うトレーニングで、静的筋収縮運動とも呼ばれる。例えば、背筋を伸ばして、腹筋を引き締めるだけでもいい。すなわち、姿勢を正すことは、背筋・腹筋の筋力トレーニングでもある。

靴や歩き方も姿勢に影響する。特に女性のハイヒールは、足に無理な力がかかり、腰椎への負担が大きい。また、外反母趾になりやすいので、靴はできるだけフラットで、足裏にアーチサポートがあるものを選びたい。

オフィスや仕事場では、同じ姿勢を長時間取るのは避けること。デスクワークが中心の人は、30分に1度程度立ち上がってストレッチや足踏みなどをするといいだろう。

姿勢の悪さが病気の原因になったり、姿勢を正して病気が治ったりするものではないが、高齢者では加齢変化によって、単なる不良姿勢が脊柱変形に変化していく。これを防ぐには、適度な運動と無理のない筋トレで、筋力と可動性を維持することだ。高齢になってからでは手遅れであり、若い時から意識的に姿勢を正し、正しい姿勢を習慣づけることが大切である。
(談話まとめ:杉元 順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/05/27号、鈴木 信正=メディカルスキャニング東京(東京都中央区)脊柱側膏症センター長]

[イラスト:市原すぐる]

戻る