【いびきと日中の眠気】

Iさん(47歳)は、妻から睡眠中のいぴきがひどいと指摘された。日中、眠気に襲われることも少なくなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑っている。

SASとは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、気道の空気の流れが悪くなったり(低呼吸)する病気だ。睡眠1時間当たりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上起こる状態、と定義されている。息を吸う時にのどが塞がる閉塞型、脳の呼吸中枢からの命令が消失する中枢型、両者が混在する混合型があるが、圧倒的に多いのは閉塞型無呼吸である。

閉塞型のSASでよく見られる症状は、いびきだ。気道が狭くなって空気の通りが悪く、気道壁が震えることによって生じる。また、脳が十分な睡眠を取れず、日中に眠気に襲われたり、集中力が低下したりする。睡眠中に体内の二酸化炭素がうまく排出されず、起床時に頭痛が起こるのもよくある症状だ。夜間頻尿やED(勃起不全)も、SASに関連する症状と考えられる。

閉塞型のSASの大きな原因は、肥満で首の周囲に脂肪がつくことだ。だが、痩せていてもSASになる場合がある。東洋人の頭蓋骨は上下に長く前後に扁平で、気道が狭く閉塞しやすい。加えて、いびきをかきやすい小さいあごの形状をしている人も多く、過労や飲酒、加齢に伴って舌のつけ根(舌根部)の筋肉が緩むと、舌が落ち込みSASを発症することになる。

SASでは仕事に支障を来したり、事故につながったりすることがあるが、影響はそれだけではない。高血圧、糖尿病、高脂血症、心筋梗塞など、動脈硬化関連の合併症を起こしやすいという問題がある。これには呼吸停止で低酸素状態を繰り返すこと、睡眠中に交感神経が活性化することなどが関係している。

CPAPで深い睡眠を回復
睡眠中のいびきや無呼吸を家族などから指摘されたり、自覚症状があったりする場合は、睡眠障害を専門に扱っているクリニックや睡眠外来を設けている病院で受診することを勧めたい。医療機関では、問診の後、簡易検査やPSG(終夜睡眠ポリグラフイー)検査を行う。検査の結果SASと診断されたら、症状の程度も考慮しながら治療をしていく。

まず工夫したいのは、睡眠中の体位だ。仰向けだと舌根部が下がり上気道が塞がれる。そこで、クッションなどを背中に当てて横向きに寝れば、症状が改善される可能性がある。

軽症の場合は、専用のマウスピースで治療する方法もある。下あごが上あごよりも少し前に出る形で固定し、睡眠中に気道が広くなるようにする。

中等症以上のSASの治療として広く普及しているのは、CPAP療法だ。鼻につけたマスクから空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐ。無呼吸が改善され、深い睡眠が得られるようになる。

就寝前の飲酒などはSASを悪化させるので控えたい。肥満の人は体重のコントロールも大切だ。
(談話まとめ:繁宮 聡=医療ジャーナリスト)

[出典;:日経ビジネス、2013/05/13号、村田 朗[御茶ノ水呼吸ケアクリニック(東京都千代田区)院長]

[イラスト:市原すぐる]

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