【登山で「頭心体」を整える】

2年前、本格的な登山の経験はないまま、富士山に登頂しました。八芳園に入社した頃は1000組前後に落ち込んでいた年間婚礼組数が2000組を超え、単独結婚式場では日本一になりました。その記念に日本一の山に登ろうと、スタッフが企画してくれたのです。

でもその時は、山登りが楽しいとは思えませんでした。頂上という目標がある時はよかったのですが、下山は風景も単調でとにかくつらい。二度と山には登りたくないと思いました。ただ、ガイドさんが言ってくれた「富士登山が登山のすべてだとは思わないでください。山登りはもっと楽しいですよ」という言葉が印象に残っていました。

そして昨年の秋に、上高地から奥穂高岳に登りました。また山に登ろうと思ったきっかけの1つは、事業展開に悩んだことでした。

私は日頃、心のコンディションを整えるように努めています。心のコンディションがよい状態であれば、体のコンディションもよくなるはずだと思うからです。また、アスリートは「心技体」 の三位一体が大切と言いますが、私は頭で考えていることと、心で感じていること、体=行動のバランスも大事だと思っています。当時は新規事業の構想で悶々としており、“頭でっかち”に なっていました。そこで、登山で思い切り体を動かして、バランスを整えようとしたんですね。

ビジネスにも気づきが
奥穂高の時は、登山が楽しいと思えました。また、山を登りながら様々な気づきがあり、ビジネスのアイデアも生まれました。紅葉や光といった自然美からブライダルにも関わりの深い色彩についてヒントを得たり、登山でもビジネスでもペース配分やチームワークが必要だと感じたり。山を下りる頃には心地よい疲れとともに、思考も心も自分なりに整理できました。悩んでいた新規事業についても構想が定まっていき、今年4月に実現しました。

ウエディングの根本を見つめ直し、新たな在り方を発信する場として「Wedding Design Garden」をオープン。新郎新婦の友人が一緒にパーティーを演出する「プライズメイド」などを提案するほか、年月を重ねても結婚記念日には、挙式当日のテーブルコーデネートやメニューを再現して食事を楽しんでいただけるレストラン「the anniversary Table」も併設しました。

こうしたブライダルサロンはウェディング業界において初めての試みですが、少子高齢化が進む中で、お客様と生涯のおつき合いをさせていただきながら成長を続け、ご夫婦やご家族の絆を深めるサポートをしていけたらと考えています。

今は「頭心体」のバランスも整い、事業に誠心誠意取り組んでいます。登山は私にとってリフレッシュだけでなく、ビジネスのヒントもくれる大切な時間です。
(談話まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)

[出典:日経ビジネス、2013/04/29-05/06号、井上 義則=八芳園常務・総支配人、ワイディア代表]

[写真:皆木 優子]

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