【内痔核を切らずに治す】

> 痔核(いぼ痔)で悩んでいるMさん(47歳)。切除手術を行わずに痔核を治せる治療法があると聞いて、興味を持っている。どんな治療法なのだろうか。

日本人の3人に1人は痔に悩んだことがあると言われるほど、痔は日本人にとって身近な病気だ。 痔には大きく分けて痔核、痔ろう、裂肛の3つのタイプがある。その中で最も多いのは痔核−いわゆる、いぼ痔であり、男女ともに半数以上を占めている。直腸側にできるものを内痔核、肛門側にできるものを外痔核と言う。

肛門門には、肛門をぴったり閉じる役割を担うクッション部分がある。血管が集まるこの部分が鬱血して、肥大したものが痔核だ。いきみの繰り返し、便秘、激しい下痢、重い物を持った時の肛門への負担などが原因になる。

軽度の出血や痛みだけなら食生活や排便習慣などを見直し、外用薬や内服薬の使用で改善する。だが、痔核が脱出して元に戻らない場合や、脱出によって日常生活に支障を来す場合、出血がひどい場合などは、手術を行う。

痔核の手術では、痔核に血液を送っている血管を縛り、痔核を切除する結紮(けっさつ)切除術が行われる。手術はごく短時間で終わり痔核を根本的に治療できるものの、1週間から10日前後の入院が必要になる。そこで最近では、内痔核を切らずに治療する「ALTA法」を行う医療機関も増えつつある。

4カ所に薬液を注射
ALTA(内痔核硬化療法剤。商品名:ジオン注)は、2005年から販売されるようになった注射剤だ。ALTAを内痔核に注射することで、硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸が内痔核の血液量を減らし、痔を硬く小さくして筋層に癒着・固定させる。痛みを感じない部分に注射するので傷口が痛むことはなく、入院期間の短縮も期待できる。

実際にALTA療法を行う時は、まず肛門周囲または下半身に麻酔をする。その後、薬液を痔核に十分に浸透させるため、1つの痔核に対して4カ所に分割してALTAを投与する4段階注射法を行う。投与後、早い段階で痔核に流れ込む血液が遮断され、痔核が縮小を始める。また、引き伸ばされていた支持組織が元の位置に癒着・固定されて直ちに脱出しなくなり、出血や肛門周囲の腫れも見られなくなる。

入院期間は通常1〜2日程度だが、痔核の数や大きさなどによって異なる。さらに、治療後も注射の炎症が治まる一定期間の通院・診察は必要だ。

ALTA療法が適応できるのは内痔核のみ。痔核の位置や症状によっては、結紮切除術と併用する場合もある。

ジオン注は効果が強い半面、適切に使用しないとごくまれに直腸狭窄、直腸潰瘍などの合併症を起こすことがある。そのため、肛門領域に精通し、注射手技講習会を受講した医師でなければ、ALTA療法を行えない。ALTA療法の講習を受けた医師や実施医療機関は、内痔核治療法研究会のホームページ(http://www.zinjection.net//)に掲載されているので、参考にしてほしい。
(談話まとめ:繁宮 聡=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/03/25号、岩垂 純一=岩垂純一診療所(東京都中央区)所長]

[イラスト:市原すぐる]

戻る