【会議の前になると腹痛が】

中間管理職のKさん(39歳)は、会議中に腹痛が起こり、トイレに掛ナ込むことが多い。上司ににらまれて困ってしまい、受診すると「過敏性腸症候群」と診断された。

過敏性腸症候群は、ストレスに腸が過敏に反応して便通異常が起こる病気だ。下痢や便秘に伴い、腹痛やお腹の張り、お腹がゴロゴロ鳴るといった消化器系の症状が見られることも特徴的。10〜30代に多いが、中年層にも増えてきている。

症状は、「下痢型」「便秘型」「混合型(下痢と便秘を繰り返す)」に分かれ、男性は下痢型が多い。症状がひどくなれば、電車を何度も途中下車したり、重要な会議を抜け出したりなどして、トイレに駆け込む人もいる。外出先で急に症状が出ることが怖くなって自宅に引きこもり、生活の質が低下してしまうケースも珍しくない。

この病気にはストレスが大きく関係する。脳が不安やストレスを感じると、その信号が腸に伝わり、腸の粘膜からセロトニンという物質が分泌される。セロトニンの作用により、腸の運動が過剰になったり、不足したりといった異常が出ると、下痢や便秘を引き起こす。腸が過敏になっているため痛みも感じやすく、便通異常や腹痛がさらにストレスや不安を増長し、症状が悪化するという悪循環に陥ってしまう。

腸の弱い人がかかる病気だと思われがちだが、そうではなく、性格が大きく影響している。凡帳面で神経質な人や気配りができて協調性のある人など、一般的に「仕事熱心で真面目な人」がなりやすい。役職で言えば、上司と部下の両方に気遣いが必要な中間管理職などは気をつけたい。仕事だけに没頭せず、休日は趣味を楽しんだり、体をゆっくり休ませたり、オンとオフの区別を心がけよう。

症状に困ったら大腸内視鏡検査を
症状が出て、日常生活や仕事に支障を来すようになったら、消化器科を受診してほしい。その際は、大腸内視鏡検査をお勧めする。潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の重大な病気と区別するためだ。過敏性腸症候群は検査では異常が見られないが、「異常がありません」と医師に言われるだけで安心し、症状がなくなる人もいる。検査のメリットはそれほど大きい。

治療は薬物療法が中心となり、腸の働きを整える整腸剤や消化管運動調律薬などで改善を図る。最近では、男性にのみ処方される薬で、下痢型にはセロトニンの働きをブロックするラモセトロン塩酸塩(商品名:イリボー)がよく使われる。

完治することを目標とするとプレッシャーがかかるので、「70%くらい症状が取れればいい」といったスタンスで治療に臨むといい。肝心なのは、ストレスなどで大きな負荷がかかった時、症状が出てきたな」と体のサインを敏感にキャッチすることだ。その時点で生活改善や仕事量を減らすなどコントロールして、病気とうまくつき合うことを意識すれば、悪化することは避けられるだろう。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/03/11号、白倉 立也=松島列ニック(横浜市西区)便秘・過敏性腸症候群(IBS)専門外来担当]

[イラスト:市原すぐる]

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