【新しい心肺蘇生法】

意識を失って道に倒れ、あえぐような呼吸をしていた人に、救命処置をしている現場に遭遇したAさん(40歳)。万が一に備えて、自分も覚えておきたいと思った。

2010年にCPR(心肺蘇生法)のガイドラインが大きく変わった。それまでのCPRは50年前に確立されたもので、日本では普及・啓発に30年の後れを取つていた。だが、ここ10年間の我が国での進歩は目覚ましく、長年積み上げてきた日本のCPRデータが、国際的ガイドラインを変えるに至った。

国際蘇生連絡委員会(ILCOR)の持つ国際的コンセンサスに、CPRの実施率の向上に向けた日本のデータを加味して新しく作成されたのが「CPR2010ガイドライン」だ。改訂の最も重要なポイントは、市民が行う1次救命処置において、心肺停止と判断した場合、救助者は気道確保や人工呼吸より先に「胸骨圧迫(心臓マッサージ)」からCPRを開始する、「ハンズオンリーCPR」と簡便になった点である。また、「すべての救助者は、訓練の有無にかかわらず、心停止の傷病者に対して胸骨圧迫を実施する」とされ、質の高い胸骨圧迫を行う重要性から「少なくとも5cmの探さで、1分間当たり少なくとも100回のテンポで胸骨圧迫を絶え間なく行う。また圧迫解除時たは完全に胸郭を元に戻す」となっている。

これらの処置は原則として、子供にも同様に行う。また、訓練を受けた救助者は、胸骨圧迫と人工呼吸を30対2の比率で行うことを推奨している。

強く、速く、絶え間なく
具体的な救命処置法は以下の通り。
@反応を確認する
 声をかけ、軽く扁を叩く。

A119番通報とAED(自動体外式除細動器)の手配
 大声で応援を呼び、協力者に119番通報とAEDの手配を依頼する。協力者がいない場合は、自ら119番通報を。

B呼吸を確認する
 胸と腹部の動きを見て、普段通りの息がなければ、呼吸停止と判断する。心停止直後に見られることのある「あえぎ呼吸(死戦期呼吸)」やけいれんは心停止と考える。

C直ちに胸骨圧迫を開始する
 胸の真ん中に、指を組んだ両手の手のひら部を当て、肘を伸ばして垂直に、体重をかけて強く、速く、絶え間なく圧迫する。救急車やAEDが到着するまで続ける。

D可能な場合は、人工呼吸を組み合わせる(省略可)
 胸骨圧迫を30回続け、気道を確保後に2回、呼気を吹き込む。

実際にやってみると意外に胸が沈まないが、とにかく続けて押すことで効果はある。AEDがあれば、電源を入れて音声の指示に従う。119番でも電話口で指導してくれる。

市民の協力で救命率は格段に高まる。救急車到着までの数分が生死を分けることもあるため、心停止の傷病者を目撃したら、躊躇なく胸骨圧迫を行ってほしい。また、講習も一度は受けておくといいだろう。
(談話まとめ:杉元 順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/02/25号、野々木 宏=静岡県立総合病院(静岡市葵区)院長代理]

[イラスト:市原すぐる]

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