【認知症は働き盛りにも】

最近、30代のアナウンサーが脳梗塞を発症したとの報道があり、若年性脳梗塞が話題になった。今回はそれにちなんで、若年性認知症について説明したい。

若年性認知症は、18歳以上64歳未満の認知症と定義されている。つまり、“働き盛りの現役世代”に発症する。認知症はお年寄りの病気というイメージが強いが、近年、若い世代で増加していることから、「老年性」と「若年性」とに区別されるようになった。

認知症は、実は疾患名ではなく、複数の症状が見られる状態を指す。そのため、原因疾患は、アルツハイマー病、脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍、交通事故のような強度の衝撃による頭 部外傷の後遺症など様々だ。

老年性ではアルツハイマー病による認知症が最も多いが、若年性のみを対象とした厚生労働省の疫学調査では、脳血管障害による認知症が最多(若年性の約40%)で、次いでアルツハイマー病(同25%)となっている。

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状」に二分されている。

中核症状は、@記憶障害(ついさっきのことが思い出せない)、A見当識障害(時間、場所などが把握しにくい)、B理解・判断力の障害(考える速さの低下、非定常のことで混乱をしやすい)、C実行機能障害(家電を使う、切符の販売機を使うなど、生活に必要な行動がしにくい)といったものがある。

周辺症状は、中核症状により引き起こされる症状だ。具体例として、大事な物をいろんな所に置き忘れ「最近よく盗まれる」と考えてしまったり、場所を明確に把握できずに不安が生じたり、できないことが増えていくことに対し憂うつな気分になってしまったり、などである。

うつ病と間違えられやすい
若年性認知症について難しい点がいくつかある。周辺症状である憂うつ気分、不安、不眠といった症状は、うつ病などのストレス関連疾患と間違えられやすい。ストレス関連疾患の方が、頻度的にも圧倒的に多いためだ。しかも、年齢の若さから、「まさか自分が」「まさかあの人が」という気持ちが働き、早期発見のチャンスを逃してしまう。また、職場では周囲が異変に気づいていても、平穏な家庭環境では家族が気がつかないこともある。

日本老年精神医学会や日本認知症学会の認知症専門医などに受診できるといいが、かかりつけ医や産業医が信頼できる専門医をご存じのこともあるので、まずは身近な医師への相談をお勧めする。適切な診断を受けるうえでは、本人の自覚症状だけでなく、第三者からの視点が大変有用な情報となる。

若年性認知症はほかの疾患と同様に、早期発見が重要だ。また、若年性認知症の40%が脳血管性障害によるものであることから、生活習慣病対策が有効な予防策と言える。
[出典:日経ビジネス、2013/02/18号、高野 知樹=神田兼クリニック院長]

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