【生活習慣病からCKDに】

会社の定期健診で、高血圧と高血糖こ加え、初期のCKD(慢性腎臓病)だと指摘されたHさん(51歳)。自覚症状もなく、初めて聞く病名に戸惑っている。

CKDは、日本の成人の8人に1人が発症しているという、今や国民病とも言える病気である。初期の段階では自覚症状がほとんど見られず、会社の健康診断などで指摘され、治療に訪れたという患者さんも少なくない。

主な自覚症状には、夜間尿、むくみ、貧血、倦怠感、息切れ、不眠などがある。だが、これらの症状は疲れや加齢のせいだと軽んじられ、放置されがちだ。症状が重く感じるようになる頃には、病気はかなり進行してしまっている。それでも治療を受けずにいると、腎機能はますます低下し、最終的には腎不全を起こす。また、腎機能の低下は脳卒中や心筋梗塞などのリスクを高め ることも明らかになっている。

腎不全になると、食事制限や透析のほか、腎臓移植が必要となる場合もある。現在、透析を受ける人の数は増加傾向にあり、約450人に1人という高い割合となっている。透析は、以前に比べれば患者さんの負担が軽減されてはいるものの、それでも週に2〜3回、治療に4〜5時間を要するため、それまでと同じ生活はできなくなる。

生活習慣病予防でリスク回避
CKDは、高血圧、高血糖、脂質異常といった、生活習慣病と密接に関係している。生活習慣病は腎臓に負担をかけ、CKDのもととなる。その逆も一部あり、CKDが高血圧の悪化を引き起こすこともある。

腎臓は、体内の老廃物の排出、血圧の調整、体液量やイオンバランスの調節などのほか、血液を作る指示を出す、丈夫な骨の形成に関わるビタミンDを作るなど、様々な役割を果たしている。 これらの機能の低下が、高血圧の悪化のほか、腎性貧血を引き起こしたり、骨をもろくしたりするのだ。

CKDを発見すること自体は、さほど難しくはない。尿たんばくの有無・程度や血清クレアチニン値を調べる尿検査と血液検査でおおむね診断がつく。会社の定期健診などで、これらの数値を調べない場合はCKDの検査をしたい旨を医師に伝え、受診するといいだろう。

治療には、食生活を含む生活習慣の見直しと、症状に合わせた投薬を行う。残念ながら、いったん悪くなった腎機能を元通りにすることはできない。CKDの特効薬はなく、症状に合わせた対症療法や食事療法で、機能の低下を緩めるようにするしか手立てはないのだ。だからこそ、この病気は予防が肝心であり、早期発見、早期治療が必須となってくる。

CKD患者の増加は、高齢化社会に加え、生活習慣病患者の増加が大きな要因となっており、その予防は、生活習慣病の予防に共通している。

過度の飲酒を控えて、食生活に気を配り、ストレスをためず、適度な運動と睡眠が十分に取れる規則正しい生活を心がけてもらいたい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/02/14号、安藤 亮一=武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)腎臓内科・内科部長]

[イラスト:市原すぐる]

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