【繰り返すめまい】

管理職のJさん(41歳)は、突然めまいと嘔吐を繰り返すようになり、不安になって耳鼻咽喉科へ。メニエール病と診断された。どうやら、ストレスがきっかけのようだ。

メニエール病は、頭がぐるぐると回転するめまいが繰り返し起こる病気だ。多くは、耳鳴りや難聴などの聴覚の異常を伴う。

耳の奥にある、平衡感覚や聴覚を司る内耳には、体の回転などを感知する三半規管と、音を感じるセンサーである蝸牛がある。この2つの器官を流れるリンパ液が水ぶくれのような状態になり 、三半規管や蛸牛を圧迫するため、耳鳴りや難聴などの症状が表れるのだ。水ぶくれになるきっかけはストレスや過労などだが、なぜ水ぶくれになるかば分かっていない。

働き盛りの30〜50代に多く発症し、神経質で凡帳面、仕事熱心な人など、ストレスをためやすい性質の人がかかりやすい傾向にある。

めまいは、10分から数時間程度で治まるが、その後、1カ月〜数カ月に1回など、繰り返すことが特徴だ。立っていられないほど頭が回り、多くは嘔吐が伴うとあって、患者さんの多くは「めまいが起きたらどうしよう」という不安感を常に抱いている。それがストレスになって、病状が悪化することも珍しくない。いつめまいが起こるか分からないため、不安で外出を躊躇してしまう人もいる。

ブーンといった耳鳴りが続く、耳の閉塞感がある、低音が聞き取りにくいなど、めまいの前触れを感じたら、早めに受診した方がよい。また、めまい日記も有効だ。めまいが起こった時の生活状況、伴った症状などを記録しておくと、めまいが始まりやすい状況が見えてきて、予防できるようになる。

メニエール病で表れる難聴は、低い音が聞こえにくくなるため、ビジネスパーソンの場合、男性上司の指示を聞きそびれ、仕事でミスを犯すようなこともあるので気をつけたい。

薬物療法と生活改善で治療を
メニエール病の治療は、薬物療法が中心だ。三半規管や蝸牛にたまる水ぶくれ状態を改善するために、利尿剤が使われる。血流を良くして内耳の働きを改善する循環改善薬や、めまいに対する不安感のある患者には抗不安薬が処方されることもある。

並行して、ストレスや疲労を取り除くために、生活改善も欠かせない。気分転換を図り、疲れを感じたら体を休めてほしい。生活リズムを見直し、1日30分以上、週2日以上を目安に、ウオーキングなどの有酸素運動を心がけるのもいいだろう。

薬物療法や生活改善で6〜7割は治癒を望めるが、症状が良くならなければ、鼓膜に小さな穴を開けて内耳の圧力を下げる手術などが検討される。

こうした治療によって、めまいは大抵治まるものの、完全には治らず、片方の耳にある程度の難聴が残ってしまうケースが多い。早めに耳鼻咽喉科やめまい専門外来を受診して、治療することが大切だ。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2013/01/28号、鈴木 衛=東京医科大学病院(東京都新宿区)耳鼻咽喉科教授]

[イラスト:市原すぐる]

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