【繰り返す口唇ヘルペス】

Wさん(46歳)は、風邪を引くと口唇ヘルペスができてしまう。ひどい水ぶくれになることもあるが、重症化や再発を防ぐことはできないのだろうか。

口唇ヘルペスは、唇や口の周辺にウイルス性の水疱(水ぶくれ)ができる病気である。原因は単純ヘルペスウイルスだ。水ぶくれの中には大量のウイルスがおり、接触することで感染する。ウイルスは唾液中にも存在し、キスなどでうつることもある。

初めてウイルスに感染した場合、子供では症状が出ないこともある。大人は4〜7日の潜伏期間を経て唇や口の周りが痛がゆくなった後、3〜5mm大の水ぶくれやかゆみが出る。口腔内にも出現し、発熱やあごの下のリンパ節の腫れ、頭痛、倦怠感などを伴うことも。その後、1週間前後でかさぶたになって治るという経過をたどる。

厄介なのはこの後だ。ほかのヘルペスウイルス同様、単純ヘルペスウイルスは症状が治まった後も神経節に潜み、抵抗力が低下すると増殖して再発を繰り返す。ただし中には、初感染で口唇ヘルペスや性器ヘルペスができても、再発時は主に性器ヘルペスができる単純ヘルペスウイルスもある。

再発しやすいのは、風邪やインフルエンザで発熱した時だ。スキーや海水浴で浴びる強い紫外線、ストレスや過労、胃腸障害、抗ガン剤の服用、時差、女性は排卵などもきっかけになる。

早めの対処が重症化を防ぐ
水ぶくれを伴う感染症や皮膚疾患は少なくない。水ぶくれができたら、皮膚科で確認してもらった方が安心だ。

大人になって初めて口唇ヘルペスのウイルスに感染すると、重症化するケースが多い。再発の場合は概して軽症だが、悪化することがないとは言えない。悪化してウイルスが爆発的に増殖すると、神経節に戻るウイルスも増加。再発頻度が高くなり、症状もさらに重くなるという悪循環に陥る。そのため、発症後は速やかに適切なケアをして、重症化を回避することが重要になる。

治療の基本は、抗ウイルス薬によってウイルスがDNAを複製するのを抑制する薬物療法だ。水ぶくれの表面のウイルスを抑える外用薬だけでなく、内服薬で神経節から出てくるウイルスの活動も抑えた方が治療効果は高い。

また、症状がある間は周囲にうつさないように注意したい。患部に触らない、水ぶくれを破らないよう気をつける、タオルや食器は共用しない、キスやオーラルセックスを避ける、などの配慮が必要になる。

再発を防ぐには、栄養バランスのいい食事を取り、ストレスや過労を避けるとともに、過去の発症前の状況を振り返り、発症につながる要因を避けるようにする。そして、皮膚の違和感やかゆみなど再発の兆しを感じたら、早めの受診を心がける。その段階で薬を内服すれば、水ぶくれができるのを防げるからだ。すぐに受診できない時でも、前回の発症時に使わなかった薬が手元に残っていたら、それを服用するのも緊急の対処として有効だ。
(談話まとめ:繁宮 聴=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/12/10号、本田 まりこ[東京慈恵科医科大学葛飾医療センター(東京都葛飾区)皮膚科教授・診療部長]

[イラスト:市原すぐる]

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